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奇妙な慣習「トコル」 中央アジアで使われるその言葉の意味とは?

(原文掲載日は2017年5月28日)

「あなたの娘も、子どもを持つのよ。大人になったその子たちが、私と同じ立場にならないよう祈ることね」カザフスタン映画 「Tokal(トカル)」のワンシーンで、カミラが恋人のカイラトに食ってかかる。

以下の記事は「翻訳で本来の意味が失われる中央アジアの表現」についてであり、グローバル・ボイスの特別企画の一環である。この企画では地方言語の曖昧な表現を研究している。

トコル(tokol)という言葉を初めて耳にしたのは、友人がどの自動車を買おうか話していたときだ。彼女の第一候補はトヨタのRAV4だったが、販売業者を見つける手伝いをすると約束していた彼女の親戚が反対した。トヨタのRAV4は男性が自分のトコル に買い与える車という評判が立っているから、と彼は説明した。

キルギスの社会文化的状況にトコル の慣習がいかに深く根付いているか、そのひとコマでわかった。このキルギス語を訳すのに考えられる言葉で最も近いのは「若い妻」だ。しかし「若い妻」は、社会的に含みのあるトコル の意味を完全には表していない。隣接するカザフスタンにも同じように社会的に含みのある同義語、トカル(tokal)がある。

「自分にはトコルとの間に二人の息子がいる」と男性がキルギス語で言うのを聞いてみよう

キルギスとカザフスタンでは長い間一夫多妻であったが、今日ではトコル は第二夫人というよりは妾に近い。妻、愛人、さらに相談相手の役目を一人でこなすような女性だろうが、彼女はその間ずっと、男性の家庭を壊さないよう裏方に徹している。

世間はトコル の立場にある女性を白い目で見ている。彼女たちをことあるごとに、妻子ある男性の家庭に寄生して自分の幸せを求める女たち、と考える女性がいる。そういう女性が彼女たちを見る目は特に厳しい。

ロシア語の流行歌「私はトカルよ。だから良心がないの」をYouTubeで聞くことができる。歌は世間がイメージするトカル をテーマにし、「我が国の未熟な子」と言っている。

奇妙な慣習

トコル およびトカル は、イスラムの慣習上の第二夫人とは全く異なるものである。それなのに、一夫多妻が違法のキルギスとカザフスタンでは、男性がイスラムの婚姻制度を実によく利用し、婚外関係にある女性の存在を正当化している。

この正当化行為は2012年に注目を浴びることとなった。当時キルギス国会で、誘拐婚(訳注:キルギス語で「アラ・カチュー」)の犠牲者を保護する法案が否決されたのだ。法案の狙いは、行政への登録が認められない婚姻の儀式を執り行う聖職者に罰金を科すことであった。男性議員と女性議員とが対立する劇的な票決となった。

ある女性議員はこう説明した。「男性議員は誘拐婚という犯罪行為を必ずしも擁護しているわけではありません。むしろ自分たちの個人的利益を守るため、つまり聖職者が認めるトコル を1人または2人持つ権利を守るために投票したのです」

キルギスにおけるトコル の慣習に巻き込まれた感がある、トヨタのRAV4。クリエイティヴ・コモンズ。

二号さん 都合のいい女性

トコル の立場の女性は、本妻と同等の社会的権利や身分を享受できない。その子どもも身分の継承や遺産相続という問題に関して、継承順位が下位になる。ただし、例外はある。例えば、男系の血筋を引き継がせるという明確な理由でトコル を迎え入れるような場合である。

この例外的な方法をとったのではないかと不確かな憶測(訳注:現在リンク先は閲覧できない)がささやかれている。それは、カザフスタンで長い間独裁政権を執っているヌルスルタン・ナザルバエフ大統領のことである。なお、同大統領と本妻のサラ・ナザルバエフとの間には娘が3人いる。

しかし、たとえナザルバエフ大統領が別の女性との間に​跡継ぎの​男子をもうけたという噂が事実だったとしても、2015年に​訪英し​当時の首相デイヴィッド・キャメロンとエリザベス女王に謁見した際、同大統領に同伴したのはトカル ではなく本妻のサラ夫人だった。

また、キルギスとカザフスタンの人は「ツノが生えない牛のように不利な状況にある」という意味の形容詞としても、トコル およびトカル を使う。この使い方は実に理にかなっている。トコル の立場の女性は、自分たちがツノのない牛と同様に不利な状況に追いやられていることに気づいている。つまり、昔ながらの妻の役目をすべてこなしているのに、自分および子どもに対して公平な待遇を保証してもらえないのだ。

相手の男性との離別、つまり死別した場合ほど、ツノのないこの状況が明白になることはない。法的な権利は本妻にあるのだから。

トカル が銀幕デビュー

トコル になってもいいと答えた女性は全体の25パーセント以下だった。これはキルギスのウェブサイトlimon.kgが行った世論調査の結果である。しかし、キルギスとカザフスタンの中年男性富裕層にとって、トコル はぜひとも手に入れたい存在なのだ。

この社会的な問題は、カザフ人ガウハール・ヌルタス監督制作の映画「トカル」 で大きく取り上げられている。ストーリーは、裕福で何不自由のないカザフ人の家庭を中心に展開していく。家長であるカイラトが若い女性カミラに心を奪われると、この家庭は崩壊の危機にひんすることになる。

カイラトは妻のボタとの間に息子を授かることができず、カミラが彼の息子を出産すると状況は複雑になる。トカル の慣習をカザフスタンの伝統と捉えるべきか、それとも単に富裕層の男性に許される贅沢と捉えるべきか。この疑問が映画のテーマになっている。

校正:Masato Kaneko

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