タジキスタンの残念な御法度13選!

原文掲載日は2017年9月23日

赤い部分がタジキスタン。出典:Asia laea location map.svg (ウーベ・デデリング)。CC 3.0

ここ数年において、旧ソ連の独立国家タジキスタンは、禁止を連発する「禁止大国」としてその名をはせる。これらの禁止事項には、政府が抱く宗教過激派への懸念に関連するようなものもあれば、中には理解に苦しむものもある。

その 1 新年を祝うべからず。ソ連の名残は捨てるべし

新年のキャラクター、ジェド・マロースとスネグーラチカ。ロシアのヴォロネジにあるレーニン広場にて。撮影:シャリン。クリエイティブ・コモンズ 3.0

最初にご紹介するのがこちら。この禁止令は2015年末に施行された。タジキスタンは学校や大学で「新年」をお祝いすることを禁じた。新しい年を迎える行事は、共産主義の時代には外せない祝祭だったというのに。いまのところ個人的には自宅で祝うことは問題ないが、それにも限度がある(詳しくは後述)。それゆえ、控えめに行うのが無難だ。

その 2 ハロウィンやホーリー祭を祝うべからず。やりたければアメリカやインドでどうぞ!

ホーリー祭を楽しむインドの人々。撮影:パシュミヌー(CC0)

Eurasianet.orgより

On May 15 [2016] police aggressively dispersed a gathering of young people celebrating the Hindi fesitival of Holi in Dushanbe on the grounds that the event was haram — not in compliance with Muslim customs. What particularly aggrieved the public was the level of physical violence used against the underage children.

Still, as the saying goes, when God closes a door, he opens a window.

Tajiks now have other days on which they can freely celebrate. There is the newly created President’s Day, on November 16, Flag Day on November 24 and then National Language Day on October 5, which happens to fall on President Emomali Rahmon’s birthday.

2016年5月15日、ドゥシャンベでヒンドゥー教のホーリー祭を祝う若者の集まりを警察が強制的に解散させる事態に至った。ハラーム(イスラム教徒の慣習に反する行為)に該当するという理由からだ。とりわけ未成年者に対する行き過ぎた暴行は、国民の反感を買った。

だが、「神扉閉じ給うとき窓開け給う」という諺があるように、いかなるときでも救いがある。

現にタジキスタンにも祝祭日はあり、国民は思い思いに過ごす。新たに制定された「大統領の日」が11月16日、「旗の日」が11月24日、そして「国語の日」の10月5日。この日は偶然にもエモマリ・ラフモン大統領の誕生日に当たる。

とはいうものの、タジキスタンでホーリー祭を祝う人は少数派だ。プチブームとなった2013年と2014年 のハロウィンでも、お祭りムードで悪魔や吸血鬼に扮した人々を警察は取り締まった。去年のホーリー祭への弾圧行為もこれに続くものなのだ。警察が祝祭中止の理由にイスラム教を引き合いに出したのは単なる口実である。あとでわかるが、タジキスタン当局はイスラム教でさえもあまり快く思っていないのだ。

では、どんな祝祭日ならタジキスタン政府のお気に召すのか?答えは簡単。ノウルーズだ。春分の日に当たるノウルーズは完全に無宗教であるため、イスラム主流でありながら世俗主義を掲げるこの国において、信仰心を高めるような心配は無用だ。そしてまた、タジキスタンに残る伝統的なペルシャ文化の流れを汲んだ慣習でもあるのだ。

その 3 誕生日は自宅だけで祝うべし。身の丈に合った暮らしをしましょう

画像:ウィル・クレイトンによりFlickrにアップロードされた「誕生日ケーキ」(CC 2.0)

カフェやレストランで自分の誕生日を祝う度胸があるならば、罰金を支払うのに十分な額を蓄えておくべきだ。

アミールベク・イサエフは、身をもってこの教訓を学んだ。ドゥシャンベのパブにこれ見よがしの誕生日ケーキを持ち込んだことで、タジキスタンでは大金である600ドル相当の罰金を科された。パブでケーキを持つイサエフの写真がFacebookに公開されるとすぐに、検察は彼を起訴した。ステーキで祝っていれば最悪の事態は免れた、かもしれない。

その 4 卒業ごときで浮かれるべからず。想像を絶する厳しく辛い現実に備えるべし

プロム(卒業パーティー) 撮影:ショーン・マグラス(CC 2.0)

「卒業パーティー」が禁止だなんて、しらけムード一色?いかにも!2016年には、ソビエト時代に重要な伝統行事のひとつであった「卒業パーティー」が禁止に追い込まれた。これまで政府がこの禁止理由に触れることはなかったが、2つの狙いがあるようだ。教師と生徒間での贈り物を禁止し、また首都ドゥシャンベで酔った卒業生たちが繰り広げるドンチャン騒ぎを抑制することだ。ともかく学業からの卒業は、今や一段と憂鬱な人生の門出になったといえるだろう。

その 5 結婚式に贅を尽くすべからず

タジキスタンの結婚式は簡素に祝うのが王道だ。これはアミールベク・イサエフの件と同じく、祝祭を規制する法律が厳格化されたことによるものだ。政府は2007年に施行したこの法律を今まで以上に厳しく改正し、国民が人生の晴れ舞台で過剰な出費を控えるように目を光らせている。

今年9月にRFE/RLが報じたものがこちら。この法に触れれば一家がどんな目に合うのかお分かりいただけるだろう。

Final preparations were in full swing at Zaidullo Khudoyorov's home in southern Tajikistan as the family got ready to celebrate the marriage of his eldest daughter.

Just hours before the party, however, a group of local officials raided the house and confiscated most of the food the family had prepared for the banquet.

The officials deemed the quantities of food “wasteful” and in violation of a newly amended Tajik law that regulates and limits how much families spend on weddings, funerals, and all other private functions.

“We managed to prevent a lawbreaking in the village,” said Kholmurod Ibrohimov, an official who took part in the August 26 raid, in Dahana, on the outskirts of the city of Kulob.

“During the raid, we established that the family prepared a wasteful amount of food, such as special flatbreads and halva for the banquet at the bridegroom's house,” Ibrohimov said on September 18, after reports of the seizure emerged. “We seized the food and handed it over to the Kulob psychiatric hospital.”

Ibrohimov also pointed out that the cost of the food was incompatible with the “impoverished” family's income.

タジキスタン南部に暮らすザイドゥロ・フドヨロフの家では、長女の結婚を祝う準備が整っていた。

しかし、結婚式が始まる数時間前に地元捜査当局の一行が家に踏み込み、披露宴のために家族が腕を振るった料理の大半を没収した。

捜査官は、料理が「無駄に多い」量であり、また新たに改正された法に触れると判断した。同法律に基づけば、結婚式や葬儀、またその他の私的な行事への家庭における出費額には規定がある。

クリャーブ郊外のダハーナで、8月26日の強制捜査に加わった捜査官ホルムロド・イブロヒモフは語った。「私たちはこの村の不届き者に手を打つことができました」

「この家庭に踏み込んだ時点で料理が必要以上にあると判断しました。そこにはフォカッチャやハルヴァ(菓子)といったごちそうが並んでいて、花婿宅で行う披露宴で振舞うために用意したものだと分かりました。そのあと私たちはこれらの没収した食べ物をクリャーブ精神科病院へ持っていきました」と、没収の件が明るみに出た9月18日、イブロヒモフは語った。

また、こうしたごちそうへの出費が「貧困家庭」の収入に不相応であると指摘した。

その 6 葬式であっても悲しみに飲まれるべからず

「インカ皇帝アタワルパの葬儀」ルイス・モンテロ作 1867年

うそではない。この禁止令は二ヶ月前に施行された。これを読んで涙してほしい。

その 7 「異国」の衣服は着るべからず。我が民族衣装に誇りをもつべし!

タジキスタンは、女性がイスラム教のヒジャブを被ることをよしとせず、民族衣装を身に付けるように促す法律を可決した。

今年9月、 欧米のメディア機関の数社は「タジキスタンはヒジャブを禁止した」と報じたが、可決した法律にヒジャブとは明言していない。むしろ、伝統的な民族衣装を異国風の服装から守ろうとする意図があるようだ。 いずれにせよ、近年タジキスタンでは、ヒジャブを被る女性に対する政府の締めつけは厳しさを増すばかりだ。中東諸国や隣国のアフガニスタンにおいては一般的な女性の装いが、タジキスタンでは取り締まりの対象になる。

公立学校でのヒジャブ着用の禁止に加えて、一部の都市ではヒジャブを販売することも禁じている。またヒジャブを身に着けた女性が病院から追い返されたとの報告も寄せられている。 タジキスタンの女性は今まで通り頭を覆うことは認められており、世間も概ねそのような装いを望ましいものだとしているのだが、「顎は出すこと」としている。彼女のように身に着ければ問題なし。

Original image from Atlas of Beauty. Viral image shared by rise.gr.

Atlas of Beautyより転載。rise.gr.に投稿された話題の画像

その 8 脚は出し惜しむべし

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Vk.comに投稿されたミーム

前述のとおり、タジキスタン政府の禁止連発は手当たり次第という有様だ。同国にて中東の装いは肩身の狭い思いをする一方で、肌を露わにするような服装は控えるに越したことはない。

実際に2016年以降、サウジアラビアと同様にタジキスタンの官庁施設においても、ショートパンツを履いていれば厳しい目を向けられる。丈の短いスカートを履くことは学校で長い間禁止されており、また公の場での着用でさえ寛容的でない。

タジキスタンの理想的な女性の服装は重々承知している。この国のあるべき男性の装いを示しておこう。

その 9 ヒゲの手入れは怠るべからず

長いあごひげはタジキスタンではアウトだ。特にあごひげを禁じる法律というわけではないのだが、国内の聖職者が定めるものによると、あごひげの長さは3センチまでとしている。さらに、タジキスタンの警察があごひげを生やしている男性に対して強制的なひげ剃りを実施する判断は、個々に委ねられているようだ。 「強制ひげそり」の憂き目にあった人の数は何千人にものぼる。 2015年にグローバル・ボイスで引用した人気ブログの記事(訳注:4月17日現在、リンク先は閲覧できない状態になっている)で、ブロガーのロスタム・グロブは自身が「強制ひげそり」の犠牲者だと訴えている。

They came for me too… Today, three policemen took me to Khujand police station and shaved my beard forcedly. This country does not have a future!

奴らが僕の所にもやって来た……。今日、3人の警官が僕をクジャン警察署に連行し無理やりにひげを剃ったんだ。この国って終わってる!

その 10 我が子に「異国の名前」や「キラキラネーム」はつけるべからず。ウケ狙いは不要!

2009年9月23日水曜日、ニューヨークメトロポリタン美術館での接見にて。タジキスタン共和国の大統領エモマリ・ラフモンと撮影に応じるバラク・オバマ大統領とミシェル夫人。(ホワイトハウスの公式写真:ローレンス・ジャクソン撮影)CC 2.0。「エモマリ」はもちろんタジキスタン名として登録条件を満たすが、「ミシェル」と「バラク」はそうはいかないだろう。

この法律は、タジク族の国民を対象としている。2016年以降、国民は公式登録の法に基づき子供に名付けることを余儀なくされた。注目するべきは、人気のあるアラビア名の一部を登録条件から除外している点だ。だが関係者によれば、「モップ」などの家庭日用品類の名前を子供につけない為の法律だという。 今年初めに、「オープン・アジア」は独自のクイズを作成した。同クイズの出題内容はタジキスタンで禁止か否かを問うものだ。それによると、「ジョン」と名付けることもまた、タジク語を話す人たちには御法度のようだ。

その 11 洋食屋であれ中華料理屋であれタジクネームをつけるべし

「Pret A Manger」はタジク語で何と言うのか?撮影: チャン・ヤン(CC 2.0)

ならばドゥシャンベで イタリアンレストランを開くとすればどうだろう? 無論、「ベラ・イタリア」のような店名をつけるなんてとんでもない。タジキスタンの公用語に関する法の下、レストランにはタジク語名をつけることが義務付けられているためなのだが、実に、ここにも型破りがいる。オープン・アジアが伝えるところによると、「サラーム・ナマステ」 という インディアンレストランが裁判沙汰になり、約100ドルの罰金を科されたという。

その 12 暴力的なスポーツにハマるべからず。テロリスト予備軍とみなします

フロイド・メイウェザーとコナー・マクレガーの対戦。Vimeo.comのスクリーンショット。

コナー・マクレガーがドゥシャンベに招待される気配は当分の間なさそうだ。2017年にタジキスタン政府のスポーツ文化省は、プロボクシングだけでなく総合格闘技(MMA)なども禁止したからだ。AFP通信は、この禁止法案をめぐる動きを次のように報じた

Tajikistan's sports committee said Wednesday it is seeking to ban professional boxing and several types of martial arts in the impoverished ex-Soviet nation over concerns they promote violence and extremism.

The committee said in a statement the ban was being proposed “taking into account the (need to) prevent violence, and prevent the lowering of honour and dignity in sport.”

タジキスタンのスポーツ委員会は水曜日、厳しい経済事情を抱える旧ソ連独立国家において、プロボクシングと数種類の格闘技の禁止を視野に検討を進めていると発表した。こうしたスポーツが暴力につながり、過激派思想に駆り立てることを危惧してのことだ。

委員会は声明の中でこの禁止案の趣旨を「暴力の芽を摘む必要性に迫られていること。また、スポーツにおける誇りや品位の低下に歯止めをかけること」だと述べている。

その後この禁止令は施行され、その代わりに国技のグシュティンギリの普及に力を入れる意向であるようだ。調査によると、ISIS新兵たちは暴力的なスポーツを好む傾向があるという。そして1000人以上の国民がイラクとシリアで過激派組織に加担しているとタジキスタン当局は伝えている。

その 13 最後の1つはコレ。ドローンは悪の手先!

ドローンで撮影した 60カ国から成るグローバル・ボイスのコミュニティメンバー。画像提供: @ka_binoとPR Works の厚意による。タジキスタンでこのような写真を撮ることは、撮影当時の2015年には合法であったが、そのわずか1年後には違法となった。

ここまで読めばおそらく、遠隔操作式の物体をむやみに空へ飛ばすなんてタジキスタンで許されざる行為だと見当がつくのではないか。そんなあなた、いい線いってる。

タジキスタンは、いち早くドローン規制に乗り出した国々のような立場にはないが、去年これらの国々に仲間入りしたかたちだ。タジキスタンの航空法改正は「テロ組織や麻薬密売業者が操る無人航空機の飛行を防ぐため」のものであると国会議員は説明している 。

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