アディオス、キノ! でも僕らの心はマファルダと共に

2014年9月にマファルダ誕生50周年の展覧会にキノが登場
写真提供: アルゼンチン文化省/Flickr (CC BY-SA 2.0)

9月30日にアルゼンチン人の漫画家ホアキン・サルバドール・ラバド・テホンが亡くなった。輝かしい受賞歴もさることながら、誰もがキノと呼ぶ、人気漫画マファルダの作者である。漫画の主人公の女の子マファルダは革命家で、フェミニストで、環境保護活動家で、人道主義者で何世代にも渡って人々の心をとらえてきた。

キノが死んだのはマファルダ初公開後56回目の記念日の翌日であった。その死はたちまち世界中に伝わり、報道機関、芸術家、有名人から彼の業績を讃える数え切れないほどの、心温まる追悼のことばや作品が寄せられた。

マファルダはスペイン語圏では一番名の知れた漫画だ。30カ国語以上に翻訳されており、その中には先住民の言語であるグアラニイ語もある。マファルダに登場する政治や社会、環境問題やフェミニズムの話題は、国や場所は異なっても世界共通で、時を経て現在も古さを感じない。

 

マファルダではよくある政治風刺。写真提供: “¡¡¡!!!”/Flickr (CC BY-NC-SA 2.0)
(1コマ目)辞書。「デモクラシー(民主主義): 語源はギリシャ語のデモス(民衆)とクラトス(権力)。民衆が権力を保持する政治形態」
(訳者注: この漫画ができたのは1973年以前。アルゼンチンでは不安定な政治状態が続いていました。どの政権も民主主義を掲げながら、民衆に権力があるとは言えない状態が続いたようです)

キノの作品の多くと同様、マファルダは当時としては物議を醸す漫画だったが、たぐいまれなユーモアのセンスでアルゼンチン軍政下の検閲をかいくぐっていた。けれどもチリのピノチェト将軍の独裁政権下では発行禁止の憂き目にあった。

漫画、雑誌、本などの出版物を飛び出し、マファルダとその仲間はテレビにも登場している。1964年から1973年までの9年間、彼女は世界を虜にし、権力に反抗し、世界は必ず良くなると信じる人たちの世界共通のシンボルとなった。

キノの訃報を受けて、インターネットは彼の描いた漫画や、アルゼンチンを始め世界中のイラストレーターや芸術家からのキノをたたえる言葉や作品で一杯になった。

こちらは在米アルゼンチン人漫画家リニエルスのイラスト。

ルリーは同じブエノスアイレスに住むイラストレーターでキノへの感謝と、死を悼む気持ちを表した。

 

コルドバのオラシオ・アルトゥナもいたく悲しんでいる。

イラストレーターのジュビアディブハ (lluviadibuja) はキノに敬意を示してスープの絵を描いた。(訳者注: マファルダはスープが大嫌い、スープには隠れた意味があります)

ユーモラスなイラストで人気のトゥテ (人気漫画家カロイの息子) の描いたお別れの絵。

今日キノが旅立った。でも心の中ではいつまでも師匠、いや大師匠であり、敬愛する人。ありがとうマエストロ、キノ♥️ (今、お別れの絵を描いています)

まるで世界中の画家がキノを死を悼んでいるようだ。こちらはギリシャの漫画家、パノス・ザカリアスのイラスト。

キノとは面識もあるコロンビアの画家ナニにとって、別れは特別なものだ。

Tuve el honor de conocerlo, era un ser excepcional, sencillo, cercano, cariñoso. Por eso la grandeza de su trabajo, Magola está inspirada en Mafalda, siempre fue mi maestro, reconozco que no le llego ni a los tobillos, ahora las dos, las tres lloramos su ausencia

キノと会えたことは私の誇り。彼は類まれな人ではあっても、実直、そして気さくで、心優しい人でした。師匠の作品はいつも私のお手本。マファルダがいたからこそ、マゴラが生まれたのです。師匠の足元にも遠く及ばない私にできるのは、マファルダとマゴラ、そして私たち、残されたもの同士で悲しむことだけ。

フェミニスタでイラストレーターのローラ・ヴェンデッタもマファルダとキノを深く愛している。

ブラジルよりはカルロス・ルアスのメッセージ

世界はキノの死を悲しむだろう。今は漫画の神様の殿堂にあってその偉業には誰も及ばない。いま自分の作品を冷静に見ることができているとすれば、彼から多くを学んだからだ。

チリの漫画家ナグはキノがたくさんの漫画を描き、楽しませてくれたことを感謝している。

楽しかったよ。ありがとう、キノ。

フランス人のフレッド・ソシャーは少女マファルダの抱く権力への不服従を高く買っている。最近起こった女子高生の着て行く服論争にはマファルダも参戦だ。

バンザイ、我らがキノ。女の子代表としてマファルダがここに表明する。
(絵)「着て行く服を決めるのは私たちだ」

ベネズエラの漫画家、エド・イラストラードは「何世代にもわたってマファルダは子供達の心に語りかけ続けてきた」という事実をみんなに思い出して欲しいようだ。

マファルダも、その漫画を見て育った子供たちも、おかげでより良い世界に住んでいるよ。ありがとうキノ。チャオ!

ホンジュラスのイラストレーター、アラン・マクドナルドは自分の悲しみをマファルダに託して伝えたいようだ。

行っちゃダメ!野菜スープだってちゃんと飲むから。

こっちはイタリアの風刺漫画家マウロ・ビアンニからのメッセージ

En la imagen: “Dice el mundo que ya te extraña. Vuelve”.

(絵)君がいないのを世界中の人が寂しがってるよ。戻ってきて!

キノの漫画とその目指すところは、きっと読み継がれながら、間違いなく人々の心に語りかけ続けるだろう。そして来たるべき世代の心も、とらえ続けて行くに違いない。

校正:Motoko Saito

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