多くのフィリピン人が政府を非難した。2015年11月18日、19日の2日間、年1回のアジア太平洋経済協力会議(以下APEC首脳会議)が開催されたことで、フィリピンの最大都市マニラにて混乱が生じたからだ。
APECとは、太平洋周辺の21か国から成る経済ネットワークで、経済統合と自由貿易の推進を目的としている。アメリカ合衆国大統領バラク・オバマを含む20人の首脳が、マニラで行われたAPEC首脳会議に出席した。
APEC首脳会議開催に伴い、主要幹線道路に会議関係者のためだけの専用車線を設置し、高級車両を用意し、また100億ペソ(およそ25億円)の予算を会議に割り当てたことについて、多くのインターネットユーザーが疑問を投げかけた。
ネットユーザーたちは、#APECtado や「壮大な失敗」という意味をかけた #APECfail などのハッシュタグをつけたツイートで怒りをぶちまけた。首脳会議開催に伴い、交通渋滞やフライトのキャンセルが起こり、インターネットの接続環境は悪化した。また、特別休暇となったことで賃金が得られなかったのである。
APEC専用車線が「ウォーキングデッド」の1シーンを再現した
下の写真は、APEC首脳会議により、首都マニラ市民の生活がいかに迷惑を被ったかを象徴するものとして、まるでウィルスのようにネット上に広がった。
This is what APEC truly means to most Filipinos (also a representation of almost everything in this country) pic.twitter.com/Qe2xRHyGdq
— Richard Bolisay (@richardbolisay) November 16, 2015
この写真こそ、APEC首脳会議が多くのフィリピン人にとってどのようなものかを表している(この国で起きているほとんどのことも)。
この写真をきっかけに、ゾンビの大量発生を描いたアメリカの人気テレビ番組「ウォーキングデッド」をもじった投稿がなされるようになった。

マニラは部分的に人気テレビ番組「ウォーキングデッド」の一場面のようになった。APECの代表に専用車線が割り当てられたからだ。”Punyeta”はフィリピン語で呪いの言葉である。画像はFacebookのページ”Pixel Offensive”より
#APECFail のハッシュタグがついたツイート
以下、APEC首脳会議開催に伴う、マニラ市民の怒りや失望を表したツイートを何点か紹介する。
Bagal ng net these past few days. Akala ko ba hindi maaapektuhan ang net speed kahit ipinagkaloob ang 8kbps sa APEC delegates. #APECtado
— Carlota Malagueño (@CarLilaLala) November 19, 2015
ここ数日、インターネットがとても遅い。APEC関係者に8キロバイトが割り当てられても、ネット環境には影響ないと思っていたのに。#APECtado
Lumubog na yung araw, hindi pa dumadating yung jeep. Nakatulog na ako sa jeep, hndi parin nakalahati ang byahe. #APECtado — Danelle Farala (@chowder009) November 19, 2015
日は沈み、ジープニー(フィリピン人の公共交通機関)はまだ着かない。つい寝てしまった。まだ半分も着いていないのに。#APECtado
At the expense of the people. Road closure, Flights cancelled and no work no pay for workers. #APECHassle https://t.co/eso60mLLlN
— James Allan Sayson (@jamesayson) November 11, 2015
人々の生活が犠牲になった。道路は封鎖され、フライトはキャンセル、仕事が休みで給料も支払われず。
#APEC2015 supposedly about inclusive prosperity but closed roads, cancelled flights show how most Filipinos are in fact excluded #APECtado — arnold padilla (@arnoldpadilla) November 16, 2015
#APEC2015では、恐らく、APEC首脳会議は全体的に成功したという旨のツイートがされている。しかし、道路は封鎖され、フライトはキャンセルされた状況からは、実際、多くの国民がいかに考慮されていなかったのかということが分かる。
ネットユーザーたちはまた、APEC首脳会議において各国の関係者をもてなすために、豪快かつ贅沢に税金が使われた、とノイノイ・アキノ大統領を非難した。その一方で、多くのフィリピン人が長らく続く貧困や不平等、飢え、失業に耐えさせられているからだ。
Crazy how Aquino shows off PH's best food for his masters in one evening while millions can't even taste those in their lifetime. #APECFail
— Hapis (@mikmikgarrido) November 18, 2015
何ということだ。アキノはフィリピンが用意できる最高級の食事を、わずか一晩のうちに客人たちにひけらかした。生涯でそんな食事、ほとんどの人が味わうことさえ出来ないというのに。
Who benefits from it? Is it the majority of the masses or the few capitalists? Exclusive economic growth ebribadi. #APECfail — Chelna Deblois (@chelniwhyy) November 18, 2015
誰が得するというのだろう。庶民の大多数か、わずかな資本家か。一部の者だけが得をする経済発展だ。
政府は、APEC首脳会議開催に伴い、不便が生じることを知らせていた。しかし、各国のゲストに「おもてなし」の心を表すためには、それは仕方のないこととしていた。
Thank you for helping show the world, through our hosting of #APEC2015, what Filipino hospitality means. pic.twitter.com/JvM63DdOgM
— APEC 2015 (@apec2015ph) November 18, 2015
セキュリティー強化に伴い、不便が生じておりますが、皆さんの辛抱とご理解に感謝します。おかげさまで、19名の経済リーダー、2名の経済界代表、21名の貿易相、21名の外務大臣、21名の政府高官、6000名を超えるスタッフや警備員、4000名を超える地域や海外メディアメンバーから成る、10,000名の各国関係者に、フィリピンのおもてなしの心を知っていただくことができます。
APEC首脳会議開催を通して、フィリピンのおもてなしがどんなものかを、世界に広めることができます。皆様のご理解、ご協力に感謝いたします。
#APEChottiesのハッシュタグを面白く思わない人も
一方、主要メディアが人気タグ#APEChottiesを過剰に取り上げたことを面白く思わない人々もいた。そのタグでは、カナダ首相ジャスティン・トルドーと、メキシコ大統領エンリケ・ペーニャ・ニエトのどちらがよりセクシーか、ということが尋ねられていた。
Remember Canada's trash and Mexico's missing 43 students. So who's your #APECbae? #APECfail
— Krissy Conti (@chronikrissys) November 17, 2015
カナダの違法ごみ輸出問題と、メキシコの学生43名行方不明、殺害問題を思い出してください。そのうえで、誰を選ぶのか。
Dear Prime Minister @JustinTrudeau, You can throw your garbage in our backyard, anytime. Please reply with a wink. #APEChotties — Fei Fei Sunshine (@ihateposh) November 17, 2015
カナダ首相ジャスティン・トルドー様
あなたの国のごみ、フィリピンの裏庭にどうぞ捨ててください。ウィンクで答えてくださいね。
Challenge to #APEChottie Justin Trudeau – STOP destructive Canadian mining firms in the Cordillera! Fake inclusive growth becomes #APECfail
— Emmi de Jesus (@emmidejesus) November 18, 2015
ジャスティン・トルドーに物申したい。コルディネラ山脈におけるカナダ採掘会社の破壊行為をやめさせろ。加盟国全体の経済成長を取り繕うことが、APECの失敗につながる。
反APEC運動
政府が、APECの議題「自由貿易によるグローバル化」に反対の意を唱える集会を行うことを禁止したため、何千もの活動家や労働団体、地元民、農家、女性、学生が、政府に対抗して道路を占拠した。彼らは、自由貿易の推進により、フィリピンのような貧国が犠牲となって、アメリカのような大国の経済を潤してきたと主張している。
Earlier, youth led burning of US flag in Liwasang Bonifacio to denounce US imperialist globalization #JunkAPEC pic.twitter.com/BfpcuqL5Ab
— mai uichanco (@thereforeiammai) November 18, 2015
先ほど、若者たちが先導し、マニラ中心部の広場でアメリカ国旗を燃やして、アメリカ率いる帝国主義グローバル化を非難した。
反APEC集会に参加した外国人もいた。
Palestinian freedom fighter Leila Khaled showing her solidarity for the people's call to #JunkAPEC pic.twitter.com/rhnX9QBa6U
— Jeoff (@jeofflarua) November 19, 2015
パレスチナ自由活動家ライラ・カリドは、人々のAPEC反対の叫びに対して#JunkAPEC のタグで賛同の意を示した。
警察は、集会のあいだ、アメリカの人気歌手ケイティ・ペリーの歌を流すことで、活動家たちがデモを行うことを阻止しようとした。
Dear @katyperry, PH gov't is using your songs to violate human rights. Please ask them to stop. Thanks https://t.co/CltB4F6Ry0
— Vencer Crisostomo (@venzie) November 20, 2015
ケイティ・ペリー、フィリピン政府は、あなたの歌を使って人権を侵害をしています。やめさせてください。
活動家の中には、デモの戦略をよく思わない者もいた。「私たちはただ、自分たちの主張に耳を傾けてもらいたいだけなのです」
抗議デモはAPEC首脳会議の開催地、フィリピンコンベンションセンターからわずか1ブロック先まで到達したところで、最高潮に達した。サミット最終日の11月19日のことであった。そこでは、警察はバリケードを作って対抗し、人々の暴力行為は広範囲に広がっていった。また、デモを阻止しようと、警察はダンスミュージックを大音量で流していた。