ニジェールというと、しばしば壮麗なサヘルの景色や過激派の暴力との戦い、そしてウラン資源のことが持ち出される場合が多い。だが、この国の国民の文化的多様さと同じくらいバラエティーに富んだ、独特な料理について語られることはめったにない。ウェブサイトthe Mapping for Niger(ニジェールのマッピングプロジェクト)のブロガーで、東部ニジェールの都市マダウア在住の アリ・ドウカ・マハマンは、他国にはほとんど知られていない彼の母国料理について紹介している。
キリシはニジェール発祥の料理で、ハウサ語で「干して香辛料をふった、薄くスライスした肉(牛や骨なし羊肉)」という意味の言葉から来ている。完成品は薄切りの干し肉だが、作るには手間暇を要する。
– 肉の切り身を選ぶ
– 肉を薄く削ぎ、脂肪を取り除く(ハウサ語でLay-laya)
– 天日にさらして並べ乾かす
– 赤く着色したピーナッツペーストで肉を塗る
– 火にかけてグリルし、仕上げにスパイスとピーナッツオイルで風味付け

味付けしたキリシ(原著者の許諾済)
ニジェールでの、キリシの生産地はほとんどがこの国南側の一帯にある。主なのはマダウアやギダンルムジの町、そして首都ニアメもそうだ。この料理の製造における主役は、肉の名人としてまっとうな名声を得てきた、バンガルーと呼ばれる食肉処理者たちだ。
キリシには主に二種類ある。
– ジャー。ピーナッツペーストと赤の着色料を塗ったキリシ。
– ルムズ。ピーナッツオイルだけのプレーンなキリシ。
キリシの生産は今でも労働集約型(訳注:労働力に対する依存度が高い産業のこと)で行われる。労働集約型こそが、ニジェールの莫大な非公式経済(訳注:課税されず、統計にも表れない地下経済)の大部分を占めているのだ。
映像は、キリシの生産工程を映したものだ。
さらには、経済状況の落ち込みによるニジェールの人材の国外大量流出によって、キリシはコートジボワールやカメルーン、ナイジェリアやガボンといった海岸域の近隣諸国へ、盛んに国境を越えて広がっている。
ニアメ市当局が実施した調査では、この町では年間推定で700から1000キログラムのキリシが作られる。オニオンスライスやスパイスともよくあい、絶品デザートとしても親しまれている。