スポーツウェア界に新風 伝統文化を表現するアフリカのデザイナーたち

シコ・リパブリックのジムウェアを宣伝するモデル。 写真:Siko republikのFacebookページより。

シコ・リパブリックのジムウェアを宣伝するモデル。 写真; Siko Republikの Facebookページより。

アフリカ大陸では絶えず世界最高峰の長距離ランナーが輩出され、サッカーが最も人気のあるスポーツとして根付いている。そんなアフリカでは、世界で最も認知され崇拝されている、ナイキ、アディダス、プーマ、アンダーアーマーといったスポーツブランドが台頭しているが、 その牙城を崩そうとする地元ブランドはこれまでほとんどなかった。しかし近年、スポーツウェアのあるべき姿の枠が、アフリカ文化を表現する新世代のデザイナーたちによって、これほどまで押し広げられたことはなかった。アフリカ向けに商品を提供しようと努める一方で、新世代の起業家たちは、自分たちの伝統に触発された、大胆で鮮やかな色使い、アフリカを象徴する柄を取り入れた新たなスポーツウェア革命の到来を告げている。

その革命には新型コロナウイルスの大流行が大きく関係していた。

2020年、アパレル業界はコロナ禍でとりわけ大きな打撃を受けることとなった。この業界はライフスタイル部門と見なされ、すべての出荷が凍結されたため、国際的なアパレル取引は低迷した。同時により多くの個人が健康志向を強め、多くの人がウォーキングやランニング、自宅でのトレーニングに目覚めた。全国的なロックダウンは消費者行動に変化をもたらした。すなわち、事業の閉鎖による購買力の低下、失業率の急上昇と相まって、消費者の嗜好(しこう)も変化したのだ。これが最近のファッショントレンドの浸透を加速させた。そのトレンドとは、アスレジャー(スポーツウェアと普段着を兼ねたファッション、Athleisure : athleticとleisureを合わせた造語)である。

グランドビューリサーチの新しいレポートによると、世界のアスレジャー市場は2030年までに6625億6000万米ドル規模になると予測されている。より身近なところでは、データブリッジマーケットリサーチの業界動向と予測レポートによると、アフリカと中東のスポーツアパレル市場は2029年までに231億9043万米ドルに達すると予想されている。

同様に、8月に公表されたアスレチックフットウェアグローバルマーケットリポート 2022によると、世界のスポーツシューズ市場規模は2021年に711億8000万ドル、2022年には767億2000万ドルにまで成長した。

アフリカのスポーツウェアブランドは90年代半ばから存在はしていた。ただ、今のブランドほど大胆な色使いや文化を強く意識するようなことはなかった。

スポーツウェアはより大胆に、より独創的でカラフルに

すべてはアンカラ生地から始まった。

2000年代半ばになると、アンカラ生地の波紋が世界に広がり始めた。以前は東アフリカ地域でキテンゲとして知られていたアンカラは、西アフリカと中央アフリカで作られ、地元で最も広く普及し、長く愛されている服地である。独特の色彩と精巧にデザインされた綿100%の生地で、一般的に「オランダワックスプリント」と呼ばれている。

アンカラは、その起源が「真の」アフリカの生地ではないとして物議を醸したにもかかわらず、その色、見た目、手触りで「アフリカのもの」と一目でわかるようになった。 2000年代後半には、この大胆でワイルドな色彩と象徴的なアンカラ柄の生地が復活し、そのデザインは今や世界中のアパレルから家具に至るまで、あらゆるファッションアイテムに使われている。 

アフリカ初のスポーツウェアブランドであるCapestorm(ケープストーム)は、南アフリカを拠点とし、主にアウトドアウェアとスポーツウェアを扱うスポーツアパレル企業として90年代に創業した。その後、2000年代半ば以降になると、南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、ボツワナから独特の大胆な柄や鮮やかな色使いのアパレル用品、スニーカーやトレーニングシューズを扱う企業が現れ始めた。それらの製品は、アンカラ生地からだけではなく、南アフリカのングニ、ガーナのケンテ、マリの泥染布マッド・クロスなど、独自の色、柄、質感をもつアフリカ特有の生地から着想を得て、グローバルブランドに代わるものとして、瞬く間に地元の購入者に支持されるようになった。

これらのブランドは、アフリカ独自の文化的要素を加味することで、アスレジャー業界に刺激を与えている。

Lornah Sports African Sportswear(ローナ・スポーツ・アフリカン・スポーツウェア) 7年前に、元ケニア人クロスカントリー世界チャンピオンのローナ・キプラガトが女性スポーツブランド、Lornah(ローナ)を立ち上げたとき、彼女は偉業を達成した最初のアフリカ人有名アスリートとなった。2015年に設立された同社は、ショーツ、シャツ、スポーツブラ、タイツ、ジャケット、ランニングドレスなど、スポーツウェアに強い関心を持つ女性にアピールする、オーセンティックで個性的なアフリカンテイストのスポーツアパレルに焦点を当てている。彼女のオンラインショップで販売され、世界的に流通しているカタログには、例えば「ツイガ(キリン)・タイツ」、「バリカ(祝福)・スポーツブラ」、「キト(宝石)・カプリパンツ」、「ムンビ(創造神)・ロングスリーブ」などといった、様々なケニアの名前やスワヒリ語が由来となったスポーツウェアが載っている。

 

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当初、ローナ・キプラガトは、アフリカをイメージしたランニングウェアのブランドビジョンしか持っていなかった。今ではLornah Sports はランナーだけでなく、世界中のあらゆるジャンルの多くのアスリートに愛用されている。

Enda(エンダ)ナヴァラヨ・オセンボとウェルドン・ケネディによって2016年に設立されたケニア初のランニングシューズ会社。同社は世界のスポーツシューズブランド市場を視野に入れている。カタログには、「ラパテット」(「走る」を意味するカレンジン族の名前)や「イテン」(マラソンの聖地で、トップクラスの長距離ランナーがトレーニングするケニアの町の名前)などの名が付いたシューズが載っている。

 

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サンブル文化にインスパイアされたIten Samburuが登場!お買い物はリンクをクリック!

Kicks Sportswear(キックス・スポーツウェア) 南アフリカを拠点とするこのブランドは、スポーツウェア、スニーカーやトレーニングシューズ、アクセサリーを専門としている。カタログには、フラッグシップ・ブランドのKicks(キックス)や、カラフルなスニーカー、Kokohva(ココバ)などがある。

 

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何を着るかは、自分を世界にどう見せるかだ。 Kicks Classicウェブサイトにて販売中(リンクへ)

AFA Sports(AFAスポーツ)元大学のバスケット選手でNBAエージェントのウーゴ・ウデズエが2017年に設立したAFA Sports(AFAはAfrica For Africaの意)は、スポーツグッズやアパレルのデザイン、開発、製造を行うナイジェリアの企業である。 

2021年にアルジャジーラの取材に応じたウデズエは、今年日本で開催されるオリンピックで、「アフリカのスポーツアパレル会社が、チームに公式ウェアを提供する先駆者となった」その「紆余曲折」について語った。

I came back to Africa with the idea of starting a continental league that would match the NBA. When we started the league I noticed that the basketballs were very slippery because they were made for air-conditioned gyms and we all know that there aren’t too many of those in Africa,” Udezue explained,”so I went to China and developed a ball that absorbs sweat and immediately we witnessed less turnovers in the game as a result.

私は、NBAに匹敵するようなアフリカンリーグを立ち上げようと考え、アフリカに戻りました。リーグを始めたとき、バスケットボールがエアコンの効いたジム用に作られているため、とても滑りやすいことに気づいたんです。私は中国に行き、汗を吸収するボールを開発しました。結果、すぐにターンオーバー(反則やミスにより、相手チームにボールが渡ること)が減りました。

AFA Sports(AFAスポーツ)は20ヵ国に出荷し、ナイジェリア出身の著名人たちから支持されている。2020年、AFA Sportsはナイジェリア女子バスケットボールチームのオリンピック出場を確保した後、アフリカを拠点とするブランドとして初めて、オリンピックナショナルチームの装備一式を提供するスポンサーとなった。

 

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トリック、ドリブル、アンクルブレイク、いい笑顔。バスケットボールは人生だ!

Ruva Africa Wear(ルバ・アフリカ・ウェア)このライフスタイル・ブランドは、ジンバブエで2015年から「日常の機能的な衣服を通してアフリカの歴史と遺産を讃える」ことを目的に活動し、アフリカの様々な国のプリントを取り入れている。RUVAという頭字語は、Responsibility(責任)、Unity(団結)、Value Creation(価値創造)、Appreciation(感謝)の頭文字をとったもの。「RUVA」のもうひとつの意味は、ジンバブエの現地語のひとつであるショナ語で「花」である。創業者のシルヴェスター・ンドロヴは、美しさ、思いやり、友情、謙虚さ、情熱など、アフリカにまつわるポジティブなシンボルを象徴する名前としてこの名前を選んだ。

 

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mallofamericaの@ruva_afric_wearストアで、おそろいの服をゲットしよう。

CultureFitClothing(カルチャー・フィット・クロージング) 西アフリカと黒人の血を引く起業家の友人たちによって2017年に設立された同社は、自分たちの伝統、旅行への愛、そして健康への関心を統合し、彼らが考える 「文化に敏感な女性のための高性能なアクティブウェア 」の創造に乗り出した。カタログの中で、ヨガマット、レギンス、スポーツブラの鮮やかなプリント柄が際立っている。

暖かくなってきました!仲間を連れて太陽を感じ、外に出て運動しよう!
当社のアンカラ・プリントは、あなたが自分の肌で最高の気分を味わえるよう、あなたのことを考えてデザインされています。
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Zawadi Sports(ザワディ・スポーツ) ユニークなアフリカンプリントのアスレジャーウェア、アクティブウェア、スイムウェアを専門とするフィットネスブランドで、そのプリントはガーナのケンテ、マリの泥布、マサイのシュカにインスパイアされている。

 

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あなたの平和を守る。

Pfeka(プフェカ) アンカラプリントからではなく、アフリカの野生動物から発想を得たこのブランドは、2018年にエグレット・ニャブブレによって設立されたジンバブエのアパレルブランドである。 元エンジニアで、正統であること、自分に忠実であることを強く信じる彼女は、現在オランダに住んでおり、アフリカンプリント紋様を服地に施すことで、日常着に付加価値を与えようとしている。Pfekaのトレードマークである黒と白のジャージは、国の誇りの象徴となっている。プエルト・カベロで開催されたドラキュラ・オープン2022ダブルスで、プロテニスプレーヤーのベンジャミンとコートニー・ロックが優勝した際に着用した。

 

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金曜日の気分
アフリカンプリントのスポーツウェア

Siko Republik(シコ・リパブリック) Pfekaと同様、この会社も創業者の遺産であるズールーランドのングニ柄からインスピレーションを得ている。2018年にジャブリレ・グワラによって、誇り高き南アフリカのアスレジャーウェアとして設立されたこの会社は、あるフラストレーションから生まれた。

2020年に『True Love』誌の取材に応じた際、グワラはこう語っている、

At the time, I was enjoying the gym and loved dressing up for it. But, I was struggling to find clothes that were comfortable, with a Nguni print on them. So, I decided to create something that was tailored for African bodies with a print that represented my tribe.

当時、私はジムを楽しんでいたし、ジムのためにオシャレをするのも好きだった。でも、着心地がよくて、ングニ族のプリントが施された服を探すのに苦労していました。そこでアフリカ人の体型に合わせて、私の部族を象徴するプリントを施したものを作ろうと思ったの。

 

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月曜日のグリーン……エネルギーを満たして目標達成の準備万端!
月曜日のワークアウトセッションを欠かさず、1週間のスタートを切りましょう。「トレーニングは自分の体を愛でるためであり、食べ過ぎの罰ゲームではない」……この1週間を楽しもう。

この記事はリチャード・ワンジョヒ氏による貢献があった。

校正:Motoko Saito

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