アフリカ原産の木々を救うために「樹木の博物館」を

原文掲載日2022年11月24日

A YouTube screenshot of the Miti Alliance Founder Michael Waiyaki inspecting the Naro Moru tree museum

ミティ・アライアンスを設立したマイケル・ワイヤキのスクリーンショット。ナロー・モルにある樹木の博物館で植物を調べるワイヤキ。YouTube/ Voices for Just Climate Actionより

1980年代ケニアの田舎で育ったころ、木は至る所にあった。その頃女子生徒だった私は、どの木の小枝が通学路で歯を磨くのに最適なのか、毎週金曜のトイレ掃除に使う天然の箒に一番いいのはどの木か、そして歯にくっつかないで良く飛ばせる天然のチューインガムにはどの木がいいのかを知っていた。本当のチューインガムはその頃とても手の届く値段ではなかったのだ。

その当時、私たちは誰もが木々を「ムエリ」「モキンドリ」「ムクングー」といった土地固有の名前で知っていた。(訳注:「ムエリ」は別名アフリカンチェリーと呼ばれる高木)そしてそれぞれがもつ薬用や機能的な用途も知っていた。一方でそれがこの土地特有の貴重な知恵であることをほとんど知らなかった。私たちが口にする食べ物と同じように、自然と調和して生きることの大切さを教える慣用句、ことわざ、至言を通して毎日のように私たちが受け取っていたことを、よく知らずに過ごしていた。私たちの地元のコミュニティであるキクユのことわざもその一つ。

Aya mendaine ta gĩkwa na Mũkũngũgũ.

ヤムイモやコンミフォラ・エミニーの木のように互いに愛し合っている。

私たちが一緒に育った木々は全て、この土地に昔からある木だった

それから30年間で、都市部や都市に近い地域で、木々はしだいに見られなくなった。急増する人口と、農業や開発のための土地の需要が飛躍的に高くなっているために、早く成長する商業的に価値がある木が求められ、在来種を犠牲にして、外来種の木々が急激に増えていった。

私と同じように、マイケル・ワイヤキも1980年代後半、ナイロビから25km(16マイル)離れたリムルの町で育った。ワイヤキは環境活動家で、伐採によって引き起こされる気候変動の壊滅的な影響を何とか減らそうと奮闘している。また環境保護にユニークな取り組みをする社会的に影響力を持つ企業ミティ・アライアンスの創設者でありCEOだ。ワイヤキはアフリカの希少な固有種の中で、まもなく絶滅するとされる若木を保護する「樹木の博物館」を建設している。

 

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私たちは昨年2021年3月、このミヤワキの森をスタートさせました。

これは17か月後。

私たちは活動する準備ができていますし、ケニアの樹木は50億本に達するでしょう。

木々は気候変動に対抗しています。

様々な役割を果たしてくれたすべての人に心から感謝します。

グローバル・ボイスのインタビューで、ワイヤキは自身の子どもの頃を、生活が自由だった時代だと言う。

There are things that we did outdoors, like gwetha nding’oing’o (looking for dung beetles), grazing cows, and playing in the forest that was so carefree. There was something about the peace I felt being in nature. 

戸外では、糞虫を探したり、牛を放牧したり、森の中で遊んだりとても気ままに過ごしました。そこには自然の中で感じる安らぎがあったのです。

彼が言うように、私たちの子ども時代については、数多くの共通の思いを感じずにはいられない。現在40歳のワイヤキが懐かしく喜びとともに思い出すのは、敷地の中の3本の巨大なアボカドの木だ。

Every harvesting season, my siblings collected the avocados and [sold] the surplus fruits in the nearby market. We’d use that pocket money to buy whatever items we needed in school.

収穫の季節はいつも、きょうだいたちがアボカドを採って、残りを近くのマーケットで売っていました。そのお金で私たちは学校で必要なものは何でも買いました。

成長するにしたがって、彼の家の周りの地域は変わり始めた、木々が緑のじゅうたんのようだったかつての景色は、しだいにトウモロコシ畑やコンクリートの都市風景へと変貌した。

彼が初めて植樹をしたのは大学時代にさかのぼる。自分のフェイスブックを使って友人に声をかけたり、自身もそのメンバーだったローターアクト・ナイロビ・セントラルでボランティアを集めたりした。わずかな資金で、彼らはその土地原産の少数の苗木を購入した。雨季の間(3-5月、11-12月)田舎の家に戻り木を植えた。

I found so much happiness in the forest, ever hiking and seeing rivers.

ハイキングをしたり、川を眺めたり、森ではとても楽しい思いをしていました。

雨季のたびごとに続けられる環境活動を通して、企業が彼の活動に加わることに興味を示し始めた。しかしそれに伴う意図はたいていワイヤキの考えに沿わないものだった。そのため常に資金繰りに苦労した。2018年ミティ・アライアンスを立ち上げ、すべての時間と努力をその活動に捧げようと決意したとき、その状況はさらに悪化した。

I could be living a better life, travelling but here I am where half of the time I'm struggling to raise salaries.

もっとよりよい生活や、旅行ができるはずなのに、ここでは半分の時間、賃金を稼ぐのに苦労しているのです。

しかし絶望のたび、何かが彼を崖っぷちから立ち上がらせてくれた。

I have tried to leave this work like everyone else. Perhaps get a good job with my Master's degree and live comfortably. But I’ve done it once before and I’d always find myself coming back. I was restless despite having good money. 

他の人と同じように、私はこの仕事をやめようとしたことがあります。修士号の学位があれば、良い仕事を得て、もっと楽に過ごせるだろうと思ったのです。でもそうやったとしても、私はいつも戻ってくるのです。お金があっても落ち着かないのです。

ワイヤキは、ケニアの自由を求めて闘った偉大なワイヤキ・ワ・ヒンガの流れをくむ。

I recently watched the video of Wangari Maathai. Wangari was talking about how her fight for Karura forest was the same fight that Waiyaki Wa Hinga fought. She said “if you want to kill me, go ahead, even Waiyaki died for this land.”  It made so much sense that I share a name and lineage with him.

最近、ワンガリ・マータイの映像を見ました。マータイは自身のカルーラの森の闘いがワイヤキ・ワ・ヒンガの闘いと同じであると語っていました。彼女は「もし私を殺したいのであれば、そうしなさい。ワイヤキもこの土地のために死んだのです」と言いました。彼と同じ名前と血筋を持つことの意味を改めて実感しました。

Primary school students planting fruit and indigenous trees in their compound. The exercise was organised and facilitated by Miti Alliance

学校の菜園で、果物や土地原産の木々を植える小学生たち。この実習はミティ・アライアンスによって企画され、進められている。写真は許可を得て使用。

故ワンガリ・マータイは有名な環境問題の提唱者で活動家、そしてノーベル平和賞の受賞者である。ワイヤキのように、気候変動を阻止するために原産の木々を植えることを強く主張していた。マータイは「大量の水を吸い上げる」外来種であるユーカリの木を川沿いに植えることの禁止を求めたことで、政治家や環境団体に不評をかった。

水資源としての重要性や気候変動の影響について人々に周知させようとする一丸となった取り組みにもかかわらず、アフリカの森林被覆は危険な割合にまで落ちてきている。2020年には、森林はアフリカのわずか22.7パーセント(6億7441万9000ヘクタール)になった。FAO(国際連合食糧農業機関)によると1990年から2010年の間に、アフリカは森林被覆の10パーセント(7481万9000ヘクタール)を失った。

アフリカ原産の木々は減少しており、これはケニアに限ったことではない。

ミティ・アライアンスは「2025年までに500万本の木を植える」という壮大な目標を掲げている。すでに250以上の学校を訪問したミティ・スクール・プログラムが主要な活動ではあるが、ワイヤキは樹木博物館設立のプロジェクトに情熱を傾けている。アフリカで2番目の高さのケニア山のふもとにある彼のナロー・モルの農場にはすでに120種を超す希少な樹種が植えられた。ミティ・アライアンスは博物館が他のプロジェクトのモデルになることを望んでいる。

If there is no change, we might be the only source of these seeds. A live seed bank shall not only protect Indigenous trees and knowledge, but we are also looking to replicate this. 

このままでは、私たちはこれらの種の唯一の供給源になりうるのです。生きた種子バンクによって土地原産の木や知識を守るだけではなく、私たちは種子の複製も考えています。

ケニアの現在の森林被覆は7.2パーセント。政府は2022年までに森林再生の努力により10パーセントまで上げることを推し進めている。

近年土地原産の木々を嫌う傾向が高まっている。原産の木々は商業的な価値は低い。しかし商業的価値を超えたものに目を向けることを学ぶ必要があることを、彼は語っている。

I feel like our kids are caught in between a very rapidly changing world. In 25 years, I want my children to have something they can remember me by. Beyond my children, my pride in being African has left me questioning, “What can I offer?” The quest is now very clear. I want to safeguard its knowledge. The more I think about it, the more I see the value. I might not get noticed but it will be worth it.”

私たちの子どもたちの世代は、大変急速に変化する世界のただ中にいると感じています。25年経って、子どもたちが私を思い出すような何かを残したいのです。子ども世代に向けてというだけではなく、アフリカ人であるという私のプライドは「私は何ができるか?」と問いかけ続けています。この探求は今やとても明確です。私はアフリカの知恵を守りたいのです。それについて考えれば考えるほど、その価値がわかります。目をとめてもらえないかもしれませんが、価値があるのです。

彼はナロー・モル樹木博物館がいかに様々な要素が重なり合った持続可能性の鍵であるかを説いた。

We see this as a great opportunity for us to create an even bigger facility to teach about not just the trees but also Indigenous vegetables and explore commercially viable explorations around Indigenous trees.

樹木に限らず、この土地で育つ野菜について教え、また原産の木々に関連する実用的な調査をするために、さらに大きな施設を作るつもりです。私たちにとって素晴らしい機会になると思います。

ワイヤキは人知れない理想を唱える孤独な活動家ではない。ケニアにはキプシギス族オギエク族、アバーデア・キブル族など荒廃している土地を再生させているコミュニティがある。ミティ・アライアンスの500万本分の在来種の種子バンクを作り保存するという大胆な目標は、いつの日か勝機をもたらすかもしれない。

校正:Eiko Iwama

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