シンガポール:毎年恒例のLGBTイベントで外国人を排除、バリケードも

2014年シンガポールでの「ピンクドット」 写真:Flicker ユーザー Jnzl(CC BY 2.0)

(原文掲載日は2017年6月8日)

2009年よりシンガポールでは性的少数者(LGBT)の権利を祝うイベント「ピンクドット」が毎年開催されている。例年、数万もの人がホンリム公園内のスピーカーズコーナーに集まり、歌やスピーチ、野外での食事やあらゆる文化的な催し物を通じて、性の平等、協調性、自由な恋愛を訴える。

9回目となるピンクドットは2017年7月1日に予定されている。しかし、シンガポール政府は今回のイベントに新たな規制を課した。まず1つに、海外からのスポンサーをやはり禁止とし、2つ目として会場に入りイベントに参加できる人をシンガポール人のみとした。そして3つ目は、イベントの安全対策の一環として、参加者は政府発行の身分証明書を持参し提示しないといけないこととなった。

イベントに集まる大勢の人の安全を確保し、外国人をイベントに入れないようにするため、公園はバリケードで覆われることになる。ホンリム公園はシンガポールで唯一人々が自由に抗議の声を上げられ集会を行える場所だということを考えると、これは異例の措置と言える。

シンガポールは男性間の性行為を合法としておらず、ピンクドットの過去の参加者たちは植民地時代から続くこの法律に対して不満の声を上げている

ピンクドット組織委員は、外国人がこの公園で公にデモ活動を行うことを禁止する公共秩序法の改正について警察から最近忠告を受けたという。この忠告を受け組織委員は、外国人がピンクドットへの参加を初めて禁止されることを残念だと述べている。

私たちはこれがシンガポール住民でない、もしくは永久市民権を得ていないパートナー、友人、家族を持つ人々に多大な影響を与え、彼らを引き裂いてしまうとわかっています。我々もこれには怒りを感じています。ただ、残念ながら、これは我々の手の届かないところでの決定なんです。

シンガポールは自国の人口がおよそ550万人であるのに対し、130万人もの外国人労働者を抱えている。

ピンクドットの代表者であるパエリン・チョアは、公園にバリケードを作るという決定は警察による押し付けだ、と言う

権力者たちにイベントを容認させる唯一の方法が、公園周辺のバリケードと検問所の設置だった。これは我々の力ではどうにもできず、そう簡単に納得できない決定だ。

組織委員は支援者たちに向けて、法を犯すことは最高1万シンガポールドル(7,228米ドル)の罰金、もしくは最長6か月の拘留となることを警告した。こうしたあらゆる規制にも関わらず、100を超える企業や組織がこのイベントへの支持を表明していると組織委員は伝えている。

一方で、ピンクドット支援者の中には国内唯一の「自由な公園」に厳しい規制を課した警察を非難する人たちもいる。

記者であるカイリー・フーは、公園周辺のバリケード設置が象徴するものを危惧している。

シンガポールがホンリム公園周辺に武装した壁を作るといった後退的な解決策に至るなんて間違っています。事実、そんな壁は少数派の人々が権力に封じ込められ処罰されるという恐ろしいイメージを広めるだけです。

カースティン・ハンは、このイベントが本来愛や協調性を祝うものであるにもかかわらず 、なぜ外国人の参加を禁止したかについて疑問を投げかけている

何事もなく終えることができたとすれば、強制的に壁を作らせておきながら愛や自尊心、協調性、容認を唱えていたイベントは実に滑稽な茶番になるでしょう。これらの新しい法律は、現実に家族を離れ離れにしています。住民でない配偶者や親せきを持つシンガポール人は、彼らと一緒にピンクドットに参加することができません。なぜなら、シンガポール人のパートナーや配偶者が「愛することの自由」を祝うためにピンク色の衣装を身に付けたとしても、彼らの大切な「外国人」たちはイベントに近づくことすらできないのだから。

ハンは、公園をバリケードで囲むことはこれからの抗議活動を阻害する先例を作ることになりうるとも言う。

しかしながら、ピンクドット組織委員はシンガポール人なら7月1日のイベントを成功させられるという自信に満ちている

… ピンクドットを祝いたいカップルや家族がこの規制のせいで一緒に祝えないかもしれない。しかし、私たちはこの国を信じている。シンガポール人は過去8年間行ってきたように今回もこのイベントをうまくやり遂げるだろう。

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