就職先の乏しいタジキスタンでは、愛する人々を残してロシアにて単純労働に就くことはよくみられる。旧ソビエト国からの若い男性たちの大量出国が引き金となったこのような社会の変化を映し出すために、現地のポップミュージックが重要な表現手段となってきた。
Намехо?ам аз ватан дур, зиндаг? мекунад ма?бур,
Макун гиря модар?онам, ?исмати мо ч? талху ш?р.
Аз оши?ам ?удо кард?, дилам пур аз ?ам?о кард?,
Маро тани тан?о кард?, ба дард?о мубтало кард?,
О? ?ариб?!
故郷を離れたくなどなかった、だがそうするしかなかった、
愛する母よ、泣かないでくれ、私たちの運命はこんなにも苦しい。
友や恋人と離れ、
私の心は悲しみに満ち、孤独で病んでいる。
タジキスタンの人口は800万人以上。そのうち労働年齢に該当する男性の半数以上が海外で就労先を探すとされており、中でもロシアへ行く者が圧倒的に多い。
世界銀行のデータによると、移民による送金額はタジキスタンの経済において26.9%を占めている。これは、中央アジアの隣国であるキルギスタン(30.4%)とネパール(31.3%)をのぞき、世界中の経済状況と比べても最も高い割合に相当する。
イスラム主流であるこの国から国民を追いやっている要因は多くある。タジキスタンは旧ソ連から独立した15共和国の中で最も貧しい国だ。汚職がはびこり、公共サービスは混乱状態にある。仕事を見つけることができても賃金は低く、しばしばインフレが追い打ちをかける。
?ар ку?о шодаму шодон, ба ёди Ватанам,
?ар ку?о ташнаву ношод, ба ёди Ватанам
幸せで嬉しい時はいつでも、故郷に思いを馳せる、
心乾いて虚しい時はいつでも、故郷に思いを馳せる。
このアップビートなミュージックビデオは、国際移住機関とタジキスタン政府が共同制作したものだ。移民たちに対して、海外での挑戦を楽しみ、故郷の発展に貢献しようと呼びかける内容となっている。
この動画では2分50秒から、タジキスタンの大統領を長く務めるエモマリ・ラフモンがモスクワにてタジキスタン移民に会う場面がある。
しかしほとんどの移民たちの現状は、この動画で描かれるものとはほど遠い。
ロシアやその他の移民受け入れ国での労働状況は大抵が貧しく、汚職、人種差別、搾取が日常生活の中で当たり前に行われている。
平均すると、毎日1人以上のタジキスタン労働者が棺に入って故郷に帰る計算となる。
Теппае г?ри бародар, теппае г?ри падар,
Байни он ду теппа бошад ?ойи як г?ри дигар.
Гар бимирам дар ?ариб?, То?икистонам баред
片方に父の墓、もう片方に兄弟の墓
もうひとつ墓のスペースはあるか?
見つけてくれ! 私が異邦の地でガリビのうちに死んだときは、私の身体を故郷へ、タジキスタンへ!
タジキスタン人は、中央アジアに最も長く定住する民族のひとつである。そんな彼らにとって、故郷を離れることによる精神的負担は筆舌に尽くしがたい。
これは、不慣れな場所で経験する惨めさ、孤独感、屈辱や飢えがおり混ざった状態を意味する「ガリビ」というタジキスタン語にみてとることができる。
Афс?с, ки дар ин дашту биёбон мурдан,
Дур аз ватану, ?удо аз хешон мурдан,
この荒野で死ぬことはあまりに悲しい、
故郷から離れ、愛するものたちから離れて。
故郷に永遠の別れを告げる?
しかし、タジキスタンからロシアへの移住によって最も苦しむのは、ほぼ間違いなく残された家族なのである。
時には、妻の出産を待たずして夫がロシアへ旅立ってしまうこともある。このような場合、子供はメッセージアプリでの会話によってしか父親とふれあうことができないかもしれないのだ。
配偶者である妻たちにとっては、夫に捨てられる恐怖が非常にリアルなものとしてつきまとう。移住者たちはロシアで新しい妻をめとる場合もあり、しばしばSMSのメッセージを通して最初の妻に離婚を告げるケースも見られる。
Азизи дури ман, ёри ?арибам, зи о??ши би?ишт сахт бенасибам,
Мабодо, ки фаром?шам намо?, бигирад тахти бахт ?амро? ра?ибам.
愛する人、私から遠く離れて、至福の時を過ごすことなく、私を置いて行くなんて、
あなたが私を忘れて、幸せの王座を別のひとに与えてしまう事が怖い。
プロのポップ歌手が自分たちの注目度をあげるために移住という現象を利用する一方で、YouTube上には移民たち自身による移住をテーマにした曲も多くある。
Як-ду сухане ки дар дилум буд, буромадан,
Ч? азобойе мекашанд берун ай ватан.
?ози боша да фикрум, чида да мулки ?арибум,
Ч? кор мекунум ма ай шумо дур да и макон,
Чиба дар барум нестед ?ози шумо, оча?он
何も言うことはない、
この苦しみを歌にのせよう、
なぜ私はここにいるのか、母から遠くはなれた知らない土地に?
多くの曲に共通しているのは、故郷に戻りたいという叫びである。
Му?о?ирбачаи саргардони то?ик, Навр?з мерасад,
Дар базми ватан оё, ?ойи ту холист.
苦しむタジキスタン移民よ、ノウルーズ(春分)がやってくる、
家に戻って祝おう、あなたがいなくて寂しい!
数々の曲が示すのは、多くの移民たちがタジキスタンへ戻って生活を築くという夢に期待しなくなってきているということだ。
2017年だけで、北国に移り永住する目的で3万人のタジキスタン人がロシア国籍のパスポートを取得していることが、それを物語っている。