(原文掲載日は2018年1月4日)

日本で高視聴率を誇る大みそか番組のひとつに、カリスマ芸人の浜田雅功が黒塗りメイクで登場した。(写真はYouTubeより引用)
日本では大みそか恒例の人気お笑い番組で、出演者のあるカリスマ芸人が黒塗りメイクで登場したことにより論争が巻き起こった。
「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」(訳注:2019年5月15日現在、リンク先は閲覧できない状態になっている)は、日本の長寿お笑いバラエティ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで(略してガキ使)」の派生番組である。
「笑ってはいけない」は、大みそか番組ではトップに次ぐ視聴率で、今回(2017年)は17.3%を記録した。2006年から毎年大みそかに放送され、「NHK紅白歌合戦」に並ぶ年末の名物番組となっている。
この番組は、5人のお笑い芸人が笑ってはいけないというルールで24時間耐えることが前提だ。笑ってしまった場合は、様々なペナルティや罰が与えられる。有名俳優やテレビタレントなどをはじめとするあらゆるゲストたちが、大方くだらない短いネタで5人に笑いを仕掛けてくる。(米国のMTV番組「Jackass」の特徴と似ているが、出演者には元ニュースキャスターやファッションモデルも含む)
番組開始10分で、メインの5人は番組を通して着用する指定の衣装に着替えるよう指示される。そのうち4人は2017年の番組テーマ「アメリカン・ポリス」に沿った、典型的な米国の保安官コスチュームを身に着けた。
最後は番組MCの1人であり日本の大スター浜田雅功。彼は顔をダークブラウンに塗り、ショートアフロスタイルの髪型で更衣室から登場した。これは1984年映画『ビバリーヒルズ・コップ』の米俳優エディ・マーフィ演じるキャラクターになりきる演出で、全く同じジャケットとひげで仕上げていた。
人種差別的な意味合いがあるにも関わらず、浜田の黒塗りメイク、いわゆる「ブラックフェイス」は、他のメンバーの爆笑を誘ったのだ。
今年の浜田wwwwwwwwwwwwwww #ガキ使#ガキ使 浜田 pic.twitter.com/GiZa7UfkwT
— ぽね0221 (@pokiti0221) December 31, 2017
日本のエンターテイメント界で長い歴史を持つブラックフェイス
ブラックフェイスの始まりは、19世紀に米国で誕生したミンストレル・ショーにある。白人俳優が顔を黒く塗りつぶし、「プランテーションのハッピー・ゴー・ラッキー・ダーキー(訳注:のんきな黒人の意)」 のような黒人に抱くステレオタイプに基づいて喜劇を演じていた。このような演出が大きく影響し、米国では黒人に対する人種差別的なイメージと意識が広まる結果となる。そして、この風習は20世紀半ばに起きた公民権運動のさなかまで続いた。
日本におけるミンストレル・ショーの起源をたどれば、日米関係の始まりにさかのぼる。それは1854年、米国のマシュー・ペリー提督が来日した際、初めて日本に紹介したのだ。お笑いで黒塗りメイクを使用する習慣は、その頃から日本に存在している。
一部の視聴者は、大みそかのガキ使で起きた浜田のブラックフェイスをよくあるネタだと感じたが、この出来事はすぐさま批判を浴び、なかでも英語圏のTwitterユーザーによる反応は大きかった。
Japanese TV is really out here putting people in blackface as a joke. What year are we in again? https://t.co/Ev91ETWA19
— pastel size 44 (@weebprince) December 31, 2017
日本のテレビがジョークでブラックフェイスをやっている。今何年にいるんだっけ?
Is Japan the only country that doesn’t know that Black Face is UNACCEPTABLE and RACIST #racism pic.twitter.com/zoSXded3N0
— MattyO (@labluejp) December 31, 2017
ブラックフェイスは許されることではなく、人種差別的であるということを知らない国は日本だけだ。
Racism in #Japan. A Japanese famous comedian in blackface and it's air on the TV program. This is DISGUSTING.#ガキ使#Blackface#Racism pic.twitter.com/0Y76y70Stn
— channel__3 (@channel__3) December 31, 2017
日本における人種差別。日本の有名お笑い芸人がブラックフェイスでテレビ番組に出演している。不愉快だ。
日本を拠点に活動する米国ジャーナリストのバイエ・マクニールは 、日本で暮らす黒人としての経験をもとに記事を連載している。なぜブラックフェイスが侮辱的になりうるのか、どんなお笑いの一部にもすべきではないのかを彼は Twitterで説明しようとした(訳注:2019年5月15日現在、リンク先は閲覧できない状態になっている)。
Note to japanese performing in #BlackFace: #Blackness is not a punchline nor a prop. Need jokes? Get better writers. Need a black character, get a black actor that speaks Japanese. There are several! But please #StopBlackfaceJapan #日本でブラックフエイス止めて not a good look! pic.twitter.com/lN0E3bWsgY
— Baye McNeil (@Locohama) December 31, 2017
ブラックフェイスやってる日本人へ。黒人であることはジョークのオチでも小道具でもないんだよ。ジョークが欲しい?ならもっと良い脚本家を雇え。黒人キャラが欲しいなら日本語を話す黒人俳優を雇え。何人かいるだろ!でもお願いだから日本でブラックフェイスはやめてくれ。かっこ悪いから!
マクニールが上記のツイートをFacebookの翻訳機能で日本語に訳そうとした時、もう一つの問題に直面した。日本語の「黒人」に対するFacebookの英訳が、 極めて差別的な蔑称になったのだ。
Not sure if this is a “bing” issue or a facebook issue but I’m pretty sure (at least I hope…Japan’s recent #blackface issues notwithstanding) the translation of 黒人 is not this!! pic.twitter.com/F9SVkFpe8a
— Baye McNeil (@Locohama) January 1, 2018
これが「bing」の問題なのか「Facebook」の問題なのか私はわからないが、黒人の訳がこれでないことは確信している!! (少なくともそう信じたい ……。日本では最近のブラックフェイス問題があるにしても)
ブラックフェイスは日本のTwitterユーザーにとってはジョーク?
残念ながら、Twitterユーザーの大半は、ブラックフェイスをネタとして使うことに不快感を示さなかった。むしろ、番組中で最も面白いネタのひとつとして笑う人もいた。
ガキ使笑う( ´∀`)涙でる(笑) pic.twitter.com/uM8BqXVRCn
— winga(土偶部名ソニーダ) (@mamatouqin) December 31, 2017
浜田の顔だけで他の仕掛けを凌駕してる
— 小鴉少佐と霧の隅で (@homhomprpr) December 31, 2017
浜田がツボって笑いとまんねぇwww
— 黄身時雨 (@sigure_ziu) December 31, 2017
何でもかんでも差別問題にしようとすること自体が「差別」
それどころか何人かのTwitterユーザーは、このネタを人種差別的と非難する人たちを皮肉ったり、批判したりし始めた。なかには、この騒ぎを人権に熱心な左翼の暴動だと捉える人もいた。
#ガキ使 浜田の紛争が黒人差別というのは昨日サーチして無かったからそれは流石に言われないかと思ってたけど、案の定今日になって出て来たか。「欧米の常識」だから正しいってわけじゃないんだよ。自分は、ネタにして良い属性といけない属性を分けるより、ネタの性質により線引きする方が良いと思う
— まつもむし (@matsmomushi) January 1, 2018
何でもかんでも差別問題にしようとする事がもはや差別だわ…
浜田がコスプレしたコメディアンのキャラを笑ってるのであり、黒人である事を笑ってるわけじゃないのにさ#ガキ使— ハルドメルグ近藤 (@jdtjfq) January 1, 2018
時事ニュース報道局 : 【何でもサベツ!】ガキ使・笑ってはいけない、浜田のエディー・マーフィーの扮装が黒人差別だとパヨクが騒ぎ立てる https://t.co/1cdg6ybesp
— 時事ニュース報道局 (@jijinewspress) January 1, 2018
日本のテレビでいまだによくあるブラックフェイス
日本のテレビ業界はつい2年前にもブラックフェイスに関する同様の議論を巻き起こした。人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」がテレビ収録のため、顔を黒く塗りミンストレル・ショーの役者のような衣装を身に着けた時だった。
しかし、あるお笑い番組のコーナーで男性同性愛者に対する差別的な描写を放送し、お笑いのポリティカル・コレクトネス(訳注:人種・宗教・性別などの違いによる偏見・差別を含まない、中立的な表現や用語を用いること)について全国的な議論が起きたのも、つい3か月前のことだ。Twitterユーザーは、すぐにこの2つの出来事とガキ使のブラックフェイス問題の類似点を指摘した。
この件については、ももクロさんのときにいろんな議論がもう出尽くしてる感あるよね→ももクロさん黒塗りブラックフェイス問題、ミュージックフェア放送を直前に控えて – NAVER まとめ https://t.co/7vHd45juvC
— qooxoop (@qooooxoooop) January 1, 2018
保毛尾田保毛男問題といい、時代錯誤も甚だしい。 https://t.co/p3fgDOoqnl
— at.les (@pruningshare) December 31, 2017
日本は意識が欠けているのか?
浜田の「ブラックフェイス」表現に抗議する日本のTwitterユーザーもいるなかで、この一件を人種差別的だと非難することへの反発が、より圧倒的な印象だった。
あるTwitterユーザーは、ガキ使のネタ自体に悪意はなく、ブラックフェイスは良くないことだと日本人がいまだ理解していないことが本当の問題だと指摘した。
私も認識不足でお恥ずかしいが、浜田氏が黒人を差別してる云々ではなく、黒塗りそのものが黒人差別というのが世界常識なのだそう。問題は制作サイドの認識のなさ、ひいては私を含めた日本人の意識の低さである。#ガキ使 浜田
— 杉清満-kiyomitsu sugi- (@sugi_kyomitsu) December 31, 2017