(編集部注: 新しくGVに加わった翻訳者に向けて翻訳のヒントを3回に分けて紹介しています。今回は最終回です)
俗語 (スラング)
GV翻訳のヒントの最終回は俗語と慣用句についてです。この2つは私のGV翻訳見習いの最中、1番難しく、それでいて楽しい部分でした。
「言葉は常に変わり続ける」という言語の本質を俗語は教えてくれます。文字でも声でも、人と人が語り合うことを愛する私にとって、俗語を見聞きすることは大きな楽しみです。しかし住む国や地域ごとに違う、地元の人にしか分からない言葉や言い回しは、言語学習者には障壁であり大きな挑戦です。スペイン語では同じ言葉が地域によって違った意味になったりします。このユーチューブの動画はスペイン語学習者が、そんなおあつらえ向きの罠にはまらないように歌で覚える動画です。
私が1996年から住んでいるチリのスペイン語にも、よそにはない言葉がたくさんあります。スペイン語話者であっても地元の人が普段使う言葉を理解するのは困難です。その言葉の多くはマプドゥングン語と言うチリ中部の先住民マプチェ族の言葉に由来します。数年前にチリの俗語辞典「How to Survive in the Chilean Jungle (チリの人混みで生き残る方法) ジョン・ブレナン、アルバロ・タボアダ共著」が出版されたのですが、この本はとても有用で今でもよくお世話になっています!
私は大人になってから、ほとんどずっとチリ暮らし。ほかのラテンアメリカやスペインの言葉には不案内なので、同じスペイン語でもGVの翻訳は一筋縄では行きません。特に手強いのはツイートです。
オンラインで開催されたラテンアメリカサミット2015(この動画は現在視聴できなくなっています)でリンガマネージャーのモハメド・エルゴアリーは、地元の人にしか分からない言い回しを訳すときは、意味が通じるような翻訳を考えるべきで、ウィキペディアは言葉の意味と翻訳の方向性を考えるときの参考になると述べています。
チリ以外のラテンアメリカで使われている俗語に慣れるには?GVエディターのラウラお勧めの方法はいろいろな国で書かれたブログを読んだり、ツイートやオンラインニュースに目を通すことです。2ケ国語対応のオンライン俗語辞書も参考にはなりますが、ラウラが1番のお勧めなのは、各地の言葉や言い回しを集めて自分で用語集を作ることです。
私がこれまでに発見したリソース:
- https://www.urbandictionary.com/ (英語の俗語辞典。米国で耳にするスペイン語も収録)
- http://www.asihablamos.com/ (ラテンアメリカ、スペインの俗語辞典)
https://www.localaventura.com/blog/guide-spanish-dialects-latin-american-slang/(このサイトは現在表示しません)- https://servicios.elpais.com/diccionarios/ (エル・パイスはスペイン最大手の新聞社。リンク先はスペイン語、英語・スペイン語、同義語/対義語の辞書です)
- ¡Qué lo Parió Che!(こりゃ驚いた)はアルゼンチンの言葉ガイド。ヘラルド・ゴベルナトリ、ロベルト・ラロッカの共著
- How to Survive in the Chilean Jungle(チリの人混みで生き残る方法)はチリの言葉ガイド。ジョン・ブレナンとアルバロ・タボアダの共著
- Con Dos Huevos(進め!ニコタマぶら下げて)はスペイン語慣用句の由来を探る本。 エロイセ・ゲレイルとダビット・サンチェスの共著
ネットで広がる話し言葉の未来
多くの人がソーシャルメディアを使うようになって、言葉の使い道も急速に変化、発展しています。その速度は今までよりもずっと早く、ソーシャルメディアの文章についていくには新造語や新しい略語、俗語、それに考え方の変化を理解、注視していくことも大事になります。
ツイートを正確に解釈して翻訳することは、GV翻訳の最難関と言えます。ツイッターをはじめとするソーシャル・メディアはもともと口語的なものです。文章ではなく、口にした言葉をネット上で共有する仕組みなのです。地元の人間にしかわからない新しい言い回しも使われるので、テキストだけ見ていても、ツイートした人の真意にはたどり着けません。社会的、政治的、文化的背景を十分に理解したうえで翻訳する必要があります。正確な翻訳のためには調査をいとわず、原文を書いた記者に意味を確かめることも時には必要です。
先のオンラインサミットでラウラはソーシャルメディアの翻訳に触れて「その場にいた、同じ目にあったという共通の体験と結びついたツイートの翻訳は非常に難しい。当事者には当たり前すぎて、文字にならない社会状況を理解した上で翻訳しなければならない。語彙(ごい)は常に変化発展し続けるものなので、それらに対応するには自分の関心分野を決めて、その分野の翻訳に注力することが必要になってきている」と話してます。