トリニダード・トバゴ:テレビコマーシャルの「暴力描写」が波紋を呼ぶ

特に断りのないリンク先は英語のページ。
トリニダード・トバゴ[jp]のケンタッキーフライドチキン(KFC)のコマーシャルが、暴力的な描写があるとして批判を集めている。とくに最近、同じ女の子に興味をもったことから十代の少年が殺害された事件が拍車をかけている。コマーシャルは事件の前から放送されていたものの、その筋書き(2人のライバルが女性の愛をめぐり取っ組み合いのけんか)があまりにも似通っていると感じたネチズンたちもいる。

最近結成されたトリニダード・トバゴいじめ対策協会(ABATT)はCMを非難する声明を発表し、KFCに放送中止を求めた刺殺事件のニュースが伝えられた後だというのに、配慮に欠けていると見なしたからだ。

The ABATT rejects outright all forms of violence, particularly in the face of the spiraling crime situation in our country. Further, in the wake of the recent youth ‘love triangle’ fracas, which led to the death of a 14 year old teenager, it is imprudent for such a commercial to be aired on television. Corporate Trinidad & Tobago has a critical role to play in shaping our society and our nation's youth and as such it is imperative that all exercise proactive rather than reactive measures.

ABATTはいかなる暴力行為も断固として認めない。とくに今、わが国の犯罪事情がうなぎのぼりになっている状況ではなおさらだ。その上、先日起きた若者の三角関係騒動で14才の少年が亡くなったというのに、テレビでそのようなCMが放送されているのは不謹慎である。トリニダード・トバゴは団結して社会と国内の若者を方向付ける重要な役割を担っている。そのため、事後の反応からではなく先を見越した対策をとることが必須である。

Judica McSweenはABATTが必要以上にことを大きくしていると考える。

Just wondering.. if the young man didn't loose (sic) his life would there be a problem with the ad.. Bullying was present in schools long before that incident, there have been numerous stabbing (sic) and violence in school before this as well as countless ads and t.v. shows depicting violence so why pick on Prestige Holdings [the company that owns the local KFC franchise] now, I think you all are really being petty and ‘nitpicking’.

ちょっと思うのだけど、もし青年が命を落としていなかったらCMがここまで問題になっていただろうか。いじめは事件のずっと前から学校で起きていたし、今この他にも暴力を描いたCMやテレビ番組が数え切れないほどあるが、すでにその以前から校内での傷害・暴力沙汰は存在していた。だから、なぜ今更こうしてプレステージ・ホールディング社(国内のKFCフランチャイズを所有している会社)が責められるのだろうか。まったくつまらない「あら探し」のように思える。

Krstyal Ghisyawanは、CMだけを問題視する人々はもっと重要な点を見逃しているのでは、と感じている。

The issue is not the ad in itself, and obviously it is unrealistic to expect all ads and tv shows depicting violence to be taken off the television. The point is that message being sent through the ad condones and trivializes violence in a society where violence is already an enormous problem. The appeal to stop reproducing the ad, asks each person and each corporation to be aware of the messages being sent and the audience that will be internalizing these messages. Violence occurring in the household, on the streets, in the media, etc, depending on the manner of depiction actually instructs others on the ‘acceptable’ uses of violence. Responsible television viewing and internet usage etc, is a must, but we cannot deny that children learn through mimicry and social practice.

問題はCMそのものにあるのではない。暴力描写のあるCMや番組をすべてテレビから排除するのは、現実的に言って明らかに無理である。重要なのは、暴力がすでに大問題になっている社会だというのに、CMによって暴力を大目に見て軽く扱うようなメッセージを送っていることだ。CMを流すのをやめろという訴えもあるが、それよりも各個人や企業は、どんなメッセージが送られているのか、視聴者がメッセージをどのように受け入れるかを意識することが求められている。家庭、路上、メディアなどで見られる暴力は、描写の仕方によっては実際他者に「容認できる」暴力の使い方を示していることになる。責任を持ってテレビを見たり、インターネットを使うのは当然であるが、子供たちはまねごとや社会的慣習を通して学んでしまうことも否定はできない。

Nicole Anatolは、個人的にはCMに問題はないと思うものの、CMを禁止にすべきという心情も理解できると言う

I saw the ad and really, as a parent I see no problem with it. I don't see violence being depicted or even glamorized, it has a playful spirit and is mildly amusing. But what is sauce for the goose may not be sauce for the gander and other parents may disagree. WE need to be the ultimate censor for our own children and communicate with them on what is appropriate and why. At the same time however, I do appreciate the stance of the Anti-Bullying Association and commend them for it. It's nice to see a change from the usual apathy.

CMを見たが、親として別に問題はないと思う。暴力が描かれているとは思わないし、美化されているようなこともない。遊び心があってそこそこ面白かったりする。でも、同じ意見の人もいればそうでない人もいるわけで、反対する親御さんもいるだろう。私たち親が自分の子供たちのために最終的な検閲をし、なにが適切かとその理由を伝えてあげる必要がある。しかしそれと同時に、いじめ対策協会の姿勢は高く評価しており賛辞を送りたい。なにかと無関心でいることが多いなか、こういった対応が見られるのは良いことだ。

ブログサイトWired868のMr. Live Wireは、ABATTが過剰反応しすぎだと言う

Quick question: What is one major similarity and difference between ‘Twilight’, ‘The Great Gatsby’, ‘The Miller’s Tale’, ‘Popeye’ and the KFC ‘Double Sweet and Fire’ advertisement?

Answer: All revolve around a love triangle that goes wrong; but only KFC is trying to sell you a chicken sandwich.

さて質問:『トワイライト』、『華麗なるギャツビー』、『粉屋の話』、『ポパイ』、KFC『ダブル・スイート・アンド・ファイヤー』のCM。これらの主な共通点と違いはなんでしょう?

答え:どれもうまくいかない恋の三角関係がらみ。でも、KFCだけがチキンサンドを売ろうとしている。

投稿は続く。

Exactly why the Anti-Bullying Association of Trinidad and Tobago (ABATT) and other bloggers believe that a 30-second advertisement in which two men playfully joust for a women’s attentions while she eats a chicken sandwich is ‘troubling, irresponsible and reckless‘ is beyond me. Particularly as all three leave arm-in-arm without so much as a scratch and, unlike Twilight or the Great Gatsby, no one is mutilated or shot.

トリニダード・トバゴいじめ対策協会(ABATT)や他のブロガーたちが、2人の男がチキンサンドを食べる女の気を引こうとふざけて一騎打ちする30秒のCMに問題があり、それを「無責任で無謀だ」と言う理由がまさに理解できない。とりわけ、3人が腕を組んでかすり傷もなく店を出るわけで、トワイライトや華麗なるギャツビーのように誰かが切断されたり銃で撃たれることはない。

Mr. Live Wireへの返答として、Philip Edward AlexanderはABATTのCM中止要請を支持した。

There is no escaping the fact that we live in extremely violent times and, while no one raindrop can or should be blamed for causing the flood, it is extremely irresponsible of the local franchise holders of KFC to attempt to justify adding even the remotest hint of support for violence whether it be tongue in cheek or otherwise when we should all be working together as a nation to promote non-violence as a means to stemming the tide.

私たちが極めて暴力的な時代にいるのは逃れようのない事実である。大問題が起きたのはこのちっぽけな問題のせいだ、と誰も責めることはできないし、責めるべきではない。しかしその一方で、地域のフランチャイズ保有者が、暴力支持をわずかにほのめかすような内容を正当化しようとするのは、冗談だろうがそうでなかろうが、みんなで国中一丸となって非暴力を推奨し、暴力を食い止めるべきときに極めて無責任だ。

Alexanderは、テレビよりも親のほうが子供への影響力があるとは言え、すべての子供が適切な監視下にあるわけではないと付け加えた。

The argument that parents and not television are supposed to raise children is the ideal, but sadly the reality does not bear out the ideal and has not for quite some time. Most organizations that deal with this fall out lament the lack of parental supervision in the home which has been dwindling for some time but has fallen off drastically in the last twenty years. The impact of this – the absentee parent from single parent homes or situations where both parents are working leaves many children to have their values set by mass media, and it is in this knowledge we must all be guided. None of us will be safe from the after effects of our actions and ‘for profit’ corporations more than most have a vested interest in the same society's long term survival.

子供を育てているのはテレビではなく親のはずだという論拠があり、確かにそうであることが望ましい。しかし、残念なことに現実にはそうはいかず、ずいぶん前からその理想を実証できる裏づけがない。そういった家庭問題に取り組む団体のほとんどは、家庭における親の監視が欠如していることを嘆いている。以前から徐々に低迷してはいたものの、急激に悪化したのはここ20年のことである。この影響として、片親の家庭のために不在の親がいたり、両働きの家庭の状況だと、多くの子供がマスメディアによって価値観を築き、これが従うべき方向だと思ってしまう。テレビの見過ぎによる影響や、「金儲け主義」の企業から逃れることは誰もできない。ほとんどの企業にとって関心があるのは、同じ社会で長く生き残ることなのだから。

6月7日、ABATTの発表によると当初CMに問題はないと言っていたKFCは、一時的にCMの放送を取りやめけんかのシーンを除く編集をするという

BREAKING NEWS: KFC has ‘pulled’ the offensive violence supporting ad and has re-edited and re-released it minus the fake violence and they must be applauded for demonstrating sound reasoning here. Thank you.

速報:KFCは暴力を支持するような不快なCMを「取り下げ」、偽の暴力シーンを除いて編集しなおしたものを放送する。こうして人々の声を聞き適切な対応をしたKFCは賞賛されるに値する。ありがとうございます。

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