1月24日にオスカー賞にノミネートされた作品が発表された。今年もまたノミネートは逃したが、クロアチア映画の「オン・ジ・アザー・サイド」という作品が 映画芸術科学アカデミーに応募されていた。これはカリフォルニア州を拠点にした、アカデミー賞を選考する団体である。
実際、1991年のユーゴスラビアからの独立以来、クロアチア制作の映画がアカデミー外国語映画賞にノミネートされたことはない。しかし、クロアチア映画がオスカー賞を一度も受賞したことがないわけではない。
クロアチア出身のドゥシャン・ヴコティチ監督(1927-1998)が「代用品」という作品(クロアチアでのタイトルは「Surogat」、ドイツでは「Ersats」)で、1961年のアカデミー短編アニメ賞を勝ち取った事実はあまり知られていない。ユーゴスラビア代表として受賞したが、これはアメリカ作品以外では初となる。キュビズム手法を用いた愉快な作品で、アカデミー・フィルム・アーカイブに保管されている。
ドウシャン・ヴコティチ監督 「代用品」1961年
ヴコティチはアニメーション・スタジオ「ザグレブ・フィルム」の創設者の一人として知られている。「ザグレブ・フィルム」は1956年に創設されて以来、400以上の作品を制作してきた。ユーゴスラビアのアニメーション制作の質を高めたのだ。
ヴコティチの作品は生前から高く評価されており、「代用品」の他にもいくつかオンラインで見ることができる作品がある。それはせっせとYouTubeに投稿してくれる彼の熱心なファンのおかげである。
1963年にもまた、ヴコティチの作品「戦争ごっこ」がアカデミー短編アニメ賞にノミネートされたが、受賞は逃してしまった。
「戦争ごっこ」
「月世界の牛」もファンの間で人気がある。この作品は1959年に発表されたが、2017年の現在でも通じるものがある。それはいじめと「工学女子」のことだ。
「復讐者」(1958)も彼の傑作短編で、ロシアの劇作家・短編小説家アントン・チェーホフの小説が元となっている。
「復讐者」(ドウシャン・ヴコティチ 1958年)
ヴコティチは1960年以降、新しいアニメーション作品にはほとんど関わらなくなり、主に長編映画の監督をしたり、ザブレブ大学芸術アカデミーの映画監督学科の教授を務めた。
ヴコティチはモンテネグロ人の血を引き、現在のボスニア・ヘルツェゴビナで生まれた。他民族の血統を引き継ぎクロアチアに住んでいることで、「兄弟愛と統一」というユーゴスラビアの理念を体現するような存在だった。しかしユーゴスラビアの解体後、様々な愛国主義作家たちが、ヴコティチの業績をそれぞれ自分たちの民族グループを代表するものだと主張した。例えば、カナダのセルビア移民のウェブサイトを見ると、彼らが選んだ「オスカーを受賞したセルビア映画界の『七人の侍』」リストにヴコティチの名前があげられているのだ。