(訳注:原文掲載日は2017年6月27日であり、記事内容は当時の状況を反映している)
タイ軍事政権の指示により、YouTubeはチャーリー・チャップリン『独裁者』の視聴を制限してしまった。
コメディ俳優チャップリンの『独裁者』は、1940年に公開したハリウッド映画で、ナチス総統アドルフ・ヒトラーの隆盛をコミカルに風刺している。
2017年6月11日、タイ人権学術ネットワークは、『独裁者』のYouTube動画を視聴するよう一般市民へしきりに促した。それは映画の中でチャップリンが、独裁者から権力を取り戻すよう人々に向けて熱く説いているからだ。
2014年、タイ国軍は政権を掌握。一方で政治、選挙制度の改革後に民政へと復帰させるとも明言した。そして、2016年に新憲法が承認され、選挙制度は整備されることになった。しかし、国の官僚制における軍事政権の立場を強化してしまっている、という議論もある。
ネット利用者らの投稿によると、6月24日、YouTube上でタイ語字幕のついたこの動画にアクセスができないという。代わりに動画のページには、次のメッセージが表示された。「政府の訴えにより、当動画は国内ドメインでの利用ができなくなっています」
6月24日というのは、タイの絶対君主制を終結した1932年立憲革命の記念日でもある。
タイ人権弁護団は、動画の制限が、デジタル経済社会省の申し立てによるものだと推測した。
ベテランジャーナリスト、プラウィット・ロチャナプルックはツイートした。これこそ「こっけいなほど常軌を逸した独裁的な」注文である、と。
Juntaland's dictator blocking Charlie Chaplin's satirical film mocking dictator is hilariously insane & dictatorial. #Thailand #censorship pic.twitter.com/yhMY9jPJ2R
— Pravit Rojanaphruk (@PravitR) June 25, 2017
国の軍事独裁に決着をつけようと、明らかな反対行動をとる活動家もいた。こうした行動をとって、立憲革命85周年を祝おうとしたのだ。政権が人々を抑留、迫害するために不敬罪(「王室の侮辱」に対する法律)を濫用し、彼らの権利を抑圧している、と訴えたのだ。
6月27日、動画は視聴可能となったが、依然としてブロックの話題はタイメディアの注目を集めている。
バンコク・ポスト新聞の社説は、政府による動画の制限を「最低な判断」だと表現した。それは、活動家たちに1932年立憲革命の記念式をさせないための妨害だとしている。
Once again, by its aggressive censorship, the regime has only succeeded in making material more popular.
This regime seized power on a single promise to bring reconciliation. It is not just failing at the task. Actions such as the weekend attacks on sense and sensibility only drive more wedges between factions and groups.
政権は攻撃的な検閲を行った。そのかいあって、またしてもこのようなネタに対し、以前より多くの注目を集めることに成功した。
行政と国民の間をとりなすことを保証して、この政権は権力を掌握したのだ。ここではその任務をしくじっただけにとどまらない。週末に行ったような知性と感性への実力行使は、派閥や小党派たちの間にさらなるクサビを打ち付けるだけだ。
ポスト紙もまた、YouTubeが再度この動画を公開してから、視聴回数は数百から数千へと急上昇している、と伝えている。