南アメリカの大切な文化「マテ茶」が絵文字の仲間入り

アルゼンチン人グループが提案したユニコード規格のマテ茶絵文字。提案書に示された絵文字。複写許諾済

ウルグアイに行ったときまず最初に、ウルグアイの人たちが常日頃からこの奇妙な木製のカップを持ち歩いているのが目につくだろう。アルゼンチンでは、誰かの家へ行くと、このカップで飲み物を出してくれるだろう。ブラジル南部の家でも同じようなことが行われている。今話題にしている飲み物はマテ茶と言われる暖かい飲み物で、イエルバ・マテの木の葉で作ったお茶である。

マテ茶を飲むのは、この地の先住民であるグアラニ―族カインガン族の習慣であり、その起源は紀元前数千年前までさかのぼる。今日では、マテ茶を飲む習慣は、チリ、パラグアイといった南アメリカ南部の国まで広範囲に及んでいる。同時に大西洋を越えてドイツ、レバノンおよびシリア(アルゼンチン産マテ茶の世界最大の輸入国)などにも及んでいる。マテ茶はスペイン語ではマテ、ポルトガル語ではマチと発音され、大抵は木製のマテ茶用カップで供され、金属製のストローで飲む。

意外なことに、何百万の人が愛飲しているのこのマテ茶の絵文字がない。しかし、それを何とかしようとしている人たちがいる。ブエノスアイレスでは、年に一度「メディア・パーティー」というコンピューター・マニアが集まるイベントが開催されている。2017年9月に開催されたそのイベントに参加した5人のアルゼンチン人が、 世界初のマテ茶絵文字を考案しようと奮い立った

「まず、マテ茶絵文字の原案を作成しました。それを、提案できるまでの絵文字に仕上げるべく検討をしました。その作業をずっと続けてきました」と、マテ茶絵文字を作ろうと努力を続けているグループの一員、サンチアゴ・ナスラ(ビデオ・ジャーナリスト)は、グローバルボイスとのメールのやり取りの中で述べている。

このグループは当初、「チョリパン」(ソーセージをパンで挟んだ料理)または昔からある「アサードと呼ばれる焼き肉料理などをアルゼンチンの代表料理と考えて絵文字にしようとしていた。しかし、最終的にはマテ茶絵文字こそ、まさにアルゼンチン文化を表わすに相応しい世界に誇れるものだと意見が一致した。

「マテ茶はこれといった特徴のあるものではありません、でも様々な文化圏にも広く浸透していると考えられるので、マテ茶を絵文字にする価値はあります」と、サンチアゴは語る。

5月に、マテ茶絵文字は、絵文字規格を取り仕切っているユニコードコンソーシアムにより、2019年の候補リストの一つとして取り上げられた。このような明るい局面を迎えることができたのは、ひとえにサンチアゴとアルゼンチン人グループの働きのおかげといえる。彼らは40ページに及ぶ提案書をユニコードコンソーシアムに提出した。

とりわけ、この提案書は、イェルバ・マテの習慣的な飲用が健康維持に深くかかわっていることを詳述している。また、イェルバ・マテの輸入国の数(2016年は113か国)についても述べている。さらに、マテ茶をたしなんでいる著名人の写真も載せている。例えば、第266代ローマ教皇フランシスコ第264代ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世前アメリカ大統領バラク・オバマ、世界的なサッカーのスター選手リオネル・メッシルイス・アルベルト・スアレスアントワーヌ・グリーズマンなどである。また、「はじまりへの旅」という映画やアマゾンプライム・シリーズで配布されている「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」といったドラマに出演している俳優たちがマテ茶を飲んでいるシーンも掲載されている。

提案書の概要は下記の通りである。

The mate emoji would not be overly specific, and in fact veers toward general, as it can be used to represent not only Latin American mate sets, but also Arab and Asian yerba mate drinkers. The design would imply “mate” as indicative of mixing the herb and water (hot or cold) and the sipping device. It is at the very least no more specific than ethnic food or beverage (aka sake) already represented in the emoji lexicon, including Mexican, Italian and Japanese foods. We have shown the proposed design to Brazilians, Paraguayans, Germans, Syrians and Uruguayans. They all understood the essence of mate in our proposal and said they would definitely use it beside the slight differences between regional cups.

マテ茶絵文字は、これまでたいして明確な存在ではなかったであろう。実際のところ、この絵文字はいま、急速に一般に知られるようになってきている段階である。ラテンアメリカのマテ茶の絵文字として用いられるだけでなく、アラブやアジアのイェルバ・マテ茶の愛飲家の間でも用いられていることからも分かるであろう。今回候補に挙げられた絵文字は、「マテ茶」とは茶葉を水(お湯または冷水)の中で掻き混ぜ、ストローですするものであることを表そうとしている。メキシコ料理、イタリア料理、日本料理などすでに絵文字リストに登録されている各国の飲食物(例えば日本酒)と同様に、マテ茶もまだ広く知られた存在ではない。提案書に示したマテ茶の絵文字をブラジル、パラグアイ、ドイツ、シリア、およびウルグアイの人たちに見てもらった。彼らは皆、我々が提案した絵文字は、マテ茶を意味するものと理解し、彼らの国で使う容器の形とは多少の違いはあるが、この絵文字をマテ茶絵文字として使うとを明言した。

10月、 ユニコードの規格に認定された絵文字が公表されたフローレンシア・コエーリョがツイートの中に掲示したものをここに示す。彼もまた提案書を起草したチームの一員である。

in Windows 10. 2019年に公表予定の絵文字を見て興奮しちゃった。

マテ茶絵文字の採用をめざすオンラインキャンペーンが、 というハッシュタグで実施されている。

このキャンペーンを支えている人たちによると、マテ茶絵文字は南アメリカから初めて採用されることとなった絵文字であり、今後世界中のパソコンキーボードで操作されることとなる。しかし、南アメリカから絵文字の提案がなされたのは、マテ茶絵文字が初めてではない。このことはハッキリしている。2017年以降、2人のブラジル人の教授が、南アメリカ固有の哺乳類であるカピバラを動物絵文字として採用するようユニコードコンソーシアムに働きかけを行ってきた。

ここ数年の間に絵文字の人気が高まるにつれ、自身の提案した絵文字が採用されることを熱望する人がますます増えている。最近絵文字リストに登録されたものの例を挙げると、同性の両親をを持つ家族の絵文字やそれぞれの肌の色を施した絵文字などが挙げられる。マテ茶絵文字支援者がもう一つ強く願っていることは、多様性が世間一般に広く認知されてほしいということである。

Mate goes beyond any drink, as it is full of cultural meaning (besides its numerous health benefits). (…) Mate is too significant, too important not to be represented by an emoji. It is time it gets it chance for the joy of its Latin American and worldwide fans.

マテ茶は単なる飲み物以上の意義を持っている。(幾多の健康効果に加え)様々な文化的意味を持っているからである。(中略)マテ茶は素晴らしい意義を持っている。だから、マテ茶こそ絵文字にするに相応しい存在なのだ。今は、ラテンアメリカ及び全世界のマテ茶ファンが喜びを共にする絶好の機会である。

ユニコードコンソーシアムは2019年2月に2回目の候補リストを、同年6月には最終選考リストを公表する予定である。マテ茶ファンは間違いなくこの2つの公表結果に目を光らせるであろう。

最新情報:
2月5日に、ユニコードコンソーシアムは2019年の230種の新しい絵文字の一つとしてマテ茶絵文字を公表した。その他、盲導犬、フラミンゴ、サリーおよびヒンズー教寺院の絵文字も公表された。

校正:Ayumi Oda

 

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