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トリニダード・トバゴ、歴史的建築物の修復をめぐる論争

(原文掲載日は2020年1月20日)

新たに改装された大統領公邸。首都ポートオブスペイン(トリニダード島)にて。写真:ジェイダ・スチュアート。許可を得て使用。

トリニダード・トバゴ共和国では近年、複数の建造物遺産で早急な修復が求められている。しかし、最近のこうした国指定の建築遺産の再生については賛否両論がある。

例を挙げれば、伝統的な国会議事堂であるレッドハウスや、首都ポートオブスペインに所在しクイーンズ・パーク・サバンナとの境に建ち並ぶ、「壮麗なる七軒」のうちの一軒であるミル・フラーは、修復完了までに長い年月を要した。最長のレッドハウスには20年の工事期間が費やされた。

長期化の理由としては、プロジェクトが莫大な領域に及んでいたことや、ミル・フラーをはじめとする複数の建物が、これまで放置され続けて解体寸前だった事実などがある。レッドハウスは状態が悪く、修復以外の選択肢はなかったと報告されている。

政府各機関の下、多くのプロジェクトは計画段階に留まっている。必要な資金調達が整い工事に着手できたのは、ここ4、5年のことに過ぎない。

修復推進の恩恵にあずかった建造物の例として、キラーニー(別称:ストールメイヤー城)、ホワイトホール(別称:ローゼンウェグ)、大統領公邸がある。

キラーニー(別称:ストールメイヤー城)。「壮麗なる七軒」のひとつであり、首都最大の緑地公園との境に位置している。写真:ジェイダ・スチュアート。許可を得て使用。

修復に先立っては、関係者に着手を促すべく多大な働きかけがあった。特に際立った働きをしたのがトリニダード・トバゴ・ナショナルトラストで、一般大衆と民間セクターへのロビー活動を展開するとともに、国内の登録建造物遺産43点の管理資金調達への協力を訴えた。

2019年10月、キース・ローリー首相は財務省の会合で演説した。彼は、これらの建物は国の歴史に関わるために保存の必要性があったこと、更には工事の実施で雇用が創出された点にも言及し、次のように述べた。

If we could not do that [restore the buildings] […] we are not worthy of our independence [from Great Britain].

もしもそれ(建物修復)をできなかったなら、(中略)私たちには(英国から)独立している価値はありません。

フェイスブックのユーザー、Aneka Nicoleは次のように書き込んだ

Trinis:
Travel to DC, go to 1600 Pennsylania Avenue, pose and take pics to post on social media.

Trinis:
Travel to the UK, go to Buckingham Palace, pose and take pics to post on social media.

Also Trinis:
Cuss about the cost of restoring historic buildings in Trinidad and Tobago, saying they are a waste of time and money.

I wonder if they know the annual cost of maintaining the two foreign examples I used?[…] the same examples they're happy to pose in front of and profile.

トリニの人々は、ワシントンDCへ旅行し、ペンシルヴァニア通り1600番地(訳注:ホワイトハウス所在地)に行き、ポーズして写真を撮ってソーシャルメディアに投稿する。

トリニの人々は、英国へ旅行し、バッキンガム宮殿に行き、ポーズして写真を撮ってソーシャルメディアに投稿する。

同じくトリニの人々は、トリニダード・トバゴにある歴史的建築物の修復費用について罵り、時間と金の無駄だと言う。

上に挙げた2つの外国の建物の年間維持費用を、彼らは知っているのだろうか。(中略)嬉しそうに前に立ってポーズを決めたり、プロフィールに載せたりしているその建物も、まさに同様の実例なのだが。

「未発展の人々」?

しかしながら、建造物遺産の修復を優先することに賛同する人ばかりではない。費やされてきた金額を考慮すればなおさらである。例えばホワイトホールの改装には、総額3200万トリニダート・トバゴドル(訳注:約4憶9千万円)を要した。大統領公邸にかかった経費は8900万トリニダート・トバゴドル(同:約13憶7千万円)。レッドハウスは桁違いに高額で、総額4憶4100万トリニダート・トバゴドル(同:約68憶円)が見積もられている。

レッドハウスは伝統ある国会議事堂である。修復工事のため、過去数年間の国会は場所を変えて開かなければならなかった。写真:ジェイダ・スチュアート。許可を得て使用。

トリニダード・トバゴ・ニュースデイ紙への投書で、グレゴリー・ワイトは、これらの建物は美しいが、あるいはその金にはもっと良い使い途があったのではないかと述べた。以下は引用。

I read a quotation recently on third world development which says, ‘All too often development in the Third World means the over-development of objects and the underdevelopment of people.’ Now, that gave me real pause, because what is the value of gleamingly restored historical buildings when many of our young citizens feel so left behind that they would rather burn these buildings down than treasure them?

私は先日、第三世界の発展について次のような文言を読みました。「往々にして、第三世界の発展とは、モノは過発展、人は未発展というものだ」。これには実に考えさせられました。なぜなら、我が国の多くの若者が取り残されたと感じているなら、まばゆく修復された歴史的建築物に何の価値があるのでしょう?彼らはこうした建物を慈しむより、むしろ焼き払いたいと思うかもしれません。

ネット上では、こうした金は病院や学校、必要性の高い社会プログラムに充当された方が良かったかもしれない、という意見もある。しかし政府は、建築物の修復は文化・経済両面において重要だという主張を崩していない。

ニュースデイ紙の社説はこれに賛同し、次のように述べた。

Money spent on these projects could have probably been pumped into healthcare, education, and infrastructure. The difference is, however, that taking care of our heritage sites is not just expenditure. It’s actually an investment in our future.

修復プロジェクトに使われた資金は、医療や教育、社会基盤へ投じることもおそらく可能だっただろう。しかしそうした用途とは異なり、我々の建造物遺産の保護は単なる消費ではない。これは実は我々の未来への投資なのだ。

同社説は、建築遺産には社会的価値があるとも主張した。

Aside from the economic argument, it is also true that these buildings are of intense social importance, and that means they should not be lost. To preserve our history is not to suggest a wish to return to the old days of inequity and oppression. It is, rather, to remind us constantly of where we have come from as well as our own capacity to evolve.

経済的な議論を脇に置いても、こうした建物が社会的に高い重要性を持つことはまぎれもなく、だからこそ失われるべきではないのである。自国の歴史を保存することで、かつての不公平と圧政の時代への回帰願望が示されるものではない。むしろ、我々の歩んできた道のりや、また我々の発展の可能性を、絶えず思い起こさせてくれるのだ。

これらの建物の大半は独立前(トリニダード・トバゴは1962年に独立)の時代に遡るもので、多くの人が英国の植民地支配を想起させるものとして捉えている。しかし、修復されているのは植民地時代の建築だけではない。他にもブライアン・ララ・スタジアムや地元の病院2棟などの改装プロジェクトがある。

ホワイトホールはトリニダード・トバゴの首相官邸である。写真:ジェイダ・スチュアート。許可を得て使用。

本記事掲載時点で、グローバル・ボイスでは、工事が完了した建物の見学の可否について確認できていない。例えばホワイトホールは伝統的に首相官邸として使用されており、警備上の制約がある。一方、キラーニーでは一般公開の展示会をこれまで複数回開催している。レッドハウスとミル・フラーは内装工事中で、一般公開の予定や時期は公式に発表されていない。

校正:Masato Kaneko

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