国際社会においての中心的役割を示すため、中国は外交の重要性を強調し続けている。 今回の王毅外相の演説は、2020年7月に習近平外交思想研究センターの発足式で行われた。 しかしながら、中国外交はその主張の内容や、しばしば「戦狼」外交と称される攻撃的な姿勢の結果、多くの手ごわい敵をつくり出してきたと指摘する中国のネットユーザー達もいる。
中国外交部が設立した同センターは、習近平国家主席の考えや発言に基づいた外交の形を発展、研究することを目的としている。 王毅外相は2020年7月20日に行われた約5000語に及ぶ就任演説(訳注:2020年8月13日現在、リンク先は閲覧できない状態になっている)の中で次のように述べた。
今日之中国,正前所未有地接近实现中华民族伟大复兴梦想,前所未有地走近世界舞台中央。…面对风云激荡的国际形势,习近平总书记以伟大战略家的远见卓识,准确把握人类社会发展规律,全面判断国际形势走向和我国所处历史方位,提出了一系列富有中国特色、体现时代精神、引领人类进步潮流的新理念新主张新倡议…
今日の中国は、中華の大復活という夢の達成と、世界舞台の中心への到達に前例がないほど近づいています……。 混迷する国際情勢の中、習近平国家主席は偉大な戦略眼により、人間社会の発展の法則を把握し、世界の将来像とわが国の歴史的立場を包括的に判断しました。習近平国家主席は、人類世界を革新的な段階へと導くため、中国の気質と時代の精神を表す理論と実践の組み合わせを提示したのです……。
王毅外相はまた、新型コロナウイルスの大流行による現在の経済混乱の中、習近平主席の業績の1つとして、中国の一帯一路構想の推進と、活躍の場を創り出したその成功について述べた。
「戦狼」外交
しかし、王毅外相の演説は、多くの国が中国との関わりの中で経験したことと、まったくつながらない。 実際、中国の国際戦略は「戦狼外交」と評する声も多い。 この表現は、2015年に公開された中国の人気映画「戦狼」からきている。愛国アクション映画で、「我が中華を犯す者は、遠きにありても必ずや誅せん」(犯我中華者 雖遠必誅)という有名な決め台詞で知られている。
「戦狼」スタイルの主張は、多くの中国外交官が採っている。 たとえば、3月、中国外交部の趙立堅報道官はツイッターで、米陸軍がCOVID-19を中国に持ち込んだ可能性があるとの陰謀説を広めた。 これは、ドナルド・トランプ米大統領が、この新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と表現したことに対する反応だった。
2月、駐スウェーデン中国大使の桂从友氏は、中国で発禁扱いの書籍を扱った香港の書店関係者で中国系のスウェーデン人、グイ・ミンハイ氏の拘束と懲役10年の判決について、「友人には最高級のワインでもてなすが、敵ならショットガンがある」と明言した。
中国の攻撃的な外交を「人質外交」と表現する人もいる。 2019年1月に中国系オーストラリア人作家、ヤン・ヘンジュン氏がスパイ容疑で拘禁されたことは、中国で2018年11月に制定された反スパイ法の結果と考えられる。
人質外交のより明らかな事例としては、2018年12月の拘留と、その後にスパイ容疑でマイケル・コブリグ氏とマイケル・スペイヴァー氏の2人のカナダ人が起訴されたことである。 この動きは、米国当局の要請によりカナダでファーウェイのCFOである孟晩舟が拘束されたことに対する報復措置と一般的に見られている。
最近、香港国家安全維持法が制定され、中英共同宣言による「一国二制度」の履行が形骸化し、外国籍者の検挙まで域外管轄権を拡大したことから、カナダやオーストラリア、米国、英国など多くの国々が香港との犯罪人引渡し条約を停止した。
さらに、トランプ大統領は、香港に対する特別待遇停止命令についても署名した。つまり、ビザの適用や懲罰的関税、機密技術輸出などの問題に関して、中国本土に適用される米国の政策が香港にも拡大されることになる。
近隣諸国との領土紛争
中国は近年、欧米諸国との対立に加え、近隣諸国とも衝突している。
2013年以来、中国政府は南シナ海の南沙諸島(英語名スプラトリー諸島)や西沙諸島(英語名パラセル諸島)の海域に人工島の建設を進めている。 この動きは、ベトナムやフィリピン、ブルネイ、マレーシアとの領土紛争を激化させている。
東シナ海では、中国と日本はともに、中国語では釣魚群島 、日本語で尖閣諸島と呼ばれる無人の群島の領有権を主張し、どちらも定期的な海上保安活動を行っている。 台湾海峡では、中国は台湾の領空と領海付近で軍事演習を行い、「グレーゾーン作戦」を取り入れている。
こうした動きは、つい最近、6月15日にラダックで起きた中国軍とインド軍の戦闘で示されたような、激しい衝突へと急速に発展する可能性がある。 20人のインド兵が死亡したこの事件は、両国間で犠牲者を出した戦闘としては少なくとも45年ぶりのものである。
習近平主席の外交に対するネットユーザー達の見解
王毅外相の演説では、中国外交に対する上記の課題は1つも言及されなかった。 一方で、中国のネットユーザー達は、中国が直面する現実を反映させて、ツイッターにて習近平の外交実績を独自にリストアップした。 EvanLi2020は次のように書いている。
“一带一路”,无底债务
“中国制造2025”,帮着美国赶紧抓捕
武汉肺炎,全球点燃
香港国安,世界不安
中印边境,石头相碰
“习近平外交思想研究中心”,就是好!
专家学者,欢聚一堂,恰似猪狗,不知羞耻? pic.twitter.com/vSPtFXN2dp— 壮飞 Flying in Rain (@EvanLi2020) July 21, 2020
一帯一路はとてつもない借金につながった。
メイド・イン・チャイナ2025は、海外ハイレベル人材招致計画「千人計画」と呼ばれた革新プログラムの下で中国に雇われた者たちを米国が逮捕するのを助けた。
武漢肺炎を全世界で誘発した。
香港の国家安全保障は、世界中を不安定にした。
中印国境では両国軍が石を投げあって激突。
習近平外交研究センター万歳!
ものすごいたくさんの専門家が嬉々として集まっている。 彼らは恥の意味さえ知っているのだろうか?
香港人の@wwp_5110は中国の金満外交の側面を強調している。
Xi‘s Thoughts on Diplomacy all about giving MONEY around the WORLD
— wwp (@wwp_5110) July 21, 2020
習近平の外交思想は世界中に金を配ることがすべて
政治反体制派@changweijian2011は、中国外交部は敵国量産部に変貌したと述べている。
习近平外交思想研究中心成立。习的外交不就是红卫兵式的战狼外交吗?一骂,二谎,三泼,四吹牛,研究个狗屁,听命就是了。习上台以来外交部的功能基本上已经消退,成为中宣部的一个对外机构,或者是部队前线快板队。中国三十多年来顺风顺水的外交已经终结,外交部成为交恶,结仇,喊打,喊杀的断交部。 pic.twitter.com/idzGCtoT3I
— 陈维健 (@chenweijian2011) July 20, 2020
習近平外交思想研究センターが発足した。 習近平の外交は、紅衛兵型の戦狼外交にすぎない。 その4つの要素は、悪態、うそ、狡猾な振る舞い、虚勢。いったい、これが研究と言えるだろうか? 命令に従うだけだろう。 外交部の機能は解体されて、習近平を応援する共産党中央宣伝部の下部組織になっている。 外交の古き良き時代はこれで終わりだ。 中国外交部は敵国量産部になってしまった。