これは雪ではない。インド第三の大都市バンガロールに点在する汚れた湖に浮かぶものは、実は有害な泡である。
この泡は、主としてベランダと呼ばれる湖で生成される。この湖へは以前からずっと、未処理下水や化学物質を含んだ排水が、適切な処理をされないままポンプで送りこまれていた。降雨時には、有害物質を含んだ湖水が、湖面上で厚く白い泡の層となる。この泡は、しばしば風にあおられ空中に舞い上がり、湖周辺一帯に広がっていく。
What you’re seeing is water rich in ammonia, phosphate, low in oxygen, forming extremely #toxic froth #bangalore pic.twitter.com/KBKU4FENZ6
— swati sambyal (@swatissambyal) October 10, 2015
いま見えているのは、アンモニアとリン酸塩を多量に含んだ酸素欠乏状態の水です。この水から極めて有害な泡が生成されています。バンガロールにて
Can this be true ? Are we living on earth or in hell ?Frightening.And unseen air pollution too is equally harmful. http://t.co/EGkqO4QxMU
— Shailaja Chandra (@over2shailaja) October 9, 2015
これは本当のことなのかしら。私たちは地球にいるのかしら、それとも地獄にいるのかしら。恐ろしいことだわ。目に見えない大気汚染だって同じように有害だわ。
「有害な雪」
バンガロールは、かつて「千の湖がある都市」として知られていたが、いまや、わずか数十の湖が残るのみとなっている。これらの湖は相互に接続されているが、近くには水や汚物を排除できる河川が存在しない。急速な都市化の進展により、かつて美しかった湖は大打撃を被り、1985年には利用可能な湖が51有ったのに、今はわずか17の湖が利用されているにすぎない。
かつての湖のいくつかは、バスターミナル、ゴルフ場、遊園地、住宅団地に変わってしまった。残った湖には、家庭排水や産業排水が全市からほとんど未処理のまま1日当たり1億3000万ガロン(訳注:約50万キロリットル)以上流入する。水質汚濁のおかげで、バンガロールは新しいあだ名を付けられた。その名は、「千の下水溜めのある所」である。
@TrafflineBLORE it doesn't snow in Bangalore, so we gave special effects on our lakes to froth to look like snow..
— Srikanth (@srikanthban) October 8, 2015
バンガロールに雪があるわけがない。湖に変なものを流すから、雪みたいな泡が出るのだ。
Byramangala Lake in Bidadi, spitting froth, thanks to entire Bangalore affluents @thebetterindia @BangaloreLakes pic.twitter.com/j9KOhKRvpr
— Paayel Sengupta (@chabiskut) October 1, 2015
ビダディーのバイラマンガラ湖が泡を吹き出している。バンガロール全部の川のせいよ。
バンガロールに住む人が、2015年5月にユーチューブに 動画を投稿した。その内容は、ベランダ湖に浮かぶ有害な泡の様子を映したものである。
バンガロール出身のIT専門家であり写真家であるデバシシュ・ゴーシュは、ガーディアン紙のウェブサイトにフォトエッセーを発表した。内容は下記のとおりである。
Bellandur Lake, in India’s technology capital, now carries huge volumes of snowy froth which blocks the adjacent canals. After a downpour, the mass of lather in the canal rises so high that it lands on the roads and causes inconvenience to those travelling on two wheels.
This froth, which would otherwise have been a sight to behold, has a pungent smell and causes irritation on contact with skin. Although the residents have raised their concerns to the authorities, the government has not taken adequate measures to curb the problem.
インドのハイテク産業中心地にあるベランダ湖。現在、湖面には雪状の泡が大量に浮いている。その泡は、この湖に接続する運河にも押し寄せている。豪雨の後、運河上の泡の塊は高く盛り上がり路上にまで達する。そのため、二輪車で通行する人たちに不便を与えている。
この泡は、有害でなければ素晴らしい眺めであるが、刺激臭があり肌に触れると炎症を起こす。住民は当局に苦情を訴えてきたが、当局は事態を収めるための適切な方策をとってこなかった。
5月には、2箇所の湖で白い泡から火がでた。洗剤、油脂を含んだ大量の産業排水が発火の原因である。
汚染問題はどうなっていくのだろうか
「ベランダ湖を救え、バンガロールを救え」という名を冠したフェイスブックページは、地域住民が湖の現状改善について声を上げるよう促すとともに、当局側に湖の汚染防止対策や浄化対策をとるよう圧力をかけている。サンチタ・ジャーは、2015年10月11日に開かれた会議の議事録を掲載した。この会議には100名以上の活動家と地方紙の関係者が参加した。議事録の内容は下記の通りである。
* Huge [froth] at outlets, was forming even back in 2000
* More than 40% of Bangalore sewage enters the Bellandur lake via many inlets like direct drainage; storm water drains (SWD) filled with industry affluent carried all the way from different parts of the city.
* Pumping stations of sewerage treatment plants attached to Bellandur lake are either not functioning or not up to the capacity of incoming water.
* Due to its size and level of contamination of Bellandur lake, it has been continuously ignored/neglected/feared by government authorities.
* The air is contaminated and also due to lot of mosquitoes from lake, there are around 5-10 Dengue cases reported daily.
* The toxic smell around the lake is so bad that it turns silver articles to black!
*排水口付近の大量の泡は、2000年にすでに生じていた。
*バンガロールの下水の40%以上は、湖に直結した排水管や雨水用排水管を経由してベランダ湖へ放出される。なお、雨水排水管には各都市部から流下する産業排水が流入している。
*ベランダ湖に接続する下水処理場のポンプ施設は機能していないか、またはポンプ排水能力が、流入水量に対応できていない。
*ベランダ湖の汚染は、あまりにも広範囲、高濃度なために、政府にとっては常に懸念材料でありながら見捨てられ放置されていた。
*大気汚染および湖で発生する大量の蚊のせいで、毎日5~10人程度のデング熱患者が報告されている。
*ベランダ湖周辺の有害ガスの臭気がひどく、銀製品は黒色に変色するほどである。
サンチタは、署名運動も始めた。そして、汚染防止の合言葉を広めた。カルナータカ州首相シッダラマイア氏はついに要望に応え、自治体当局に対し現地に行き問題に対処するよう指示を出した。
I have spoken to BBMP Com & have asked him to take steps to permanently curb Bellandur lake pollution. @bbmpadmn pic.twitter.com/qn0YS2Ckyb
— CM of Karnataka (@CMofKarnataka) October 8, 2015
私は、バンガロール都市圏委員(BBMP Com)に電話をした。そして、ベランダ湖の汚染問題を恒久的に抑制する対策を講じるよう要請した。
カルナータカ州汚染防止対策委員会(KSPCB)は、全市にわたる湖沼保護監視委員会の設立準備を進めている。汚染防止をさらに進めるため、監視委員会の構成員には、利害関係者として地域住民を含めることとしている。しかし、バンガロール在住のアシュレシュ・ガラテは、自分のフェイスブック上で、次のように言っている。つまり、1999年に最高裁判所は、各市当局にベランダ湖を浄化するよう指令を出した。しかし、17年後も同湖は汚染されたままである。一体どれだけ時間がたてば、ベランダ湖を浄化し、バンガロール市内にあるその他の湖の汚染も食い止めることができるのか。現時点ではまだわからぬままだ。