インド、カシミール:社会の壁を破る女性起業家たち

原文掲載日:2018年12月13日 

マフティ・サディア、自身の店舗にて。写真は許可を得て使用。

インド統治下のジャンムー・カシミール州(訳注:2019年10月31日よりジャンムー・カシミール連邦直轄領となっている)では、操業停止命令や夜間外出禁止令の発令が頻発し、生活やビジネスは先行きの見えない状況である。新しいビジネスの立ち上げは誰にとっても厳しいものであるが、働く場での役割について社会の基準と戦わなければならない女性にとって、その障壁はさらに何倍も大きい。それにもかかわらず、その壁を破り、自身のビジネスを立ち上げている女性たちがいる。

マフティ・サディアがビジネスを始めたとき、カシミールのアパレル業界に女性は誰もいなかった。サディアがそれまでの職を辞め、この渓谷地域で独立して仕事をしようと決意し、オープンした彼女のブティックはシュリーナガルで初めての店のひとつとなった。

多くの障害や課題に直面しながらも、サディアは「ハンガーズ・ザ・クローゼット」(現在このサイトは閲覧できません)という独自のブランドを2014年あるショッピングモールに開店した。批判的なことを言われても屈せず、彼女はけっして後ろを振り返ることはない。

マフティ・サディア(24)は、女性のためのブティックであるハンガーズ・ザ・クローゼットをシュリーナガルにオープンした。カシミールのサラ・シティ・センターで女性の店舗オーナーは唯一人だ。

「父は私がやっていたことを信じていませんでした。というのも、その時私は24歳でしたから。でも今では父も私の仕事を応援してくれます」と、サディアは客に応対しながら話す。

家族はサディアにとって、発想の源でありつづけた。事業を始めたばかりの女性起業家という不安定な状況にあって困難に立ち向かう彼女を、家族はいつも支えてきた。ハンガーズ・ザ・クローゼットは、カシミール地域で今では知られたブランドだ。

サディアは顧客の多くをインスタグラムやフェイスブックから得ている。彼女のデザイナーウェアの多くは、カシミールの伝統的な衣装に西欧の趣向を加えることを目指している。ゼロから出発しながらも彼女は事業を拡大し、11人の従業員に加え女性販売員を雇うまでになった。

「これまでのところ反応は良好です。私はソーシャルメディアで批判的な言葉を、女性からさえも受け取ることがありますが、こういったコメントは、私が人として成長し、より優れたデザイナーとなるために必要だと考えています」とサディアは付け加える。

サディアが、アパレル業界で自分自身の事業を始めようとしている多くの女性たちに影響を与えている一方で、シュリーナガルの旧市街で、その優れたビジネスへの取り組みにより、差し迫った倒産の危機から家族を救った女性がいる。

リファト・マソオディ。写真は許可を得て使用。

リファト・マソオディは2児の母である。義理の父が亡くなった直後、家族はシュリーナガルの中でも最も危険な地域にあるバット製造工場の閉鎖を考えていた。

果敢にも、リファトは夫を説得し、地元の労働者を多く雇用するその工場を経営することにした。世間の反発にもかかわらず、リファトは2000年にその挑戦を始めた。 

                                        

素晴らしい。軍と民間人との抗争がつづくシュリーナガルのダウンタウン、人目につかない場所で、リファト・マソオディの静かな気概に満ちた物語が書き進められている。

カシミールでバット製造工場を営む唯一の女性は、こうアピールする。「@imVkohli @msdhoni @ImRo45(訳注:インドのクリケット競技の選手たち)が、私たちのバッドをもう買いに来ても良い時です」

以上、お伝えしました。

毎朝、子どもたちを学校へ送り出した後、リファトは自宅のそばの小さな工場に出かけ、仕事を管理している。現在、リファトのバット製造工場では、毎月数千本のバットを製造し、マハーラーシュトラやケーララを含む多数の州に輸送している。

「すべてを管理することは大変です。朝、私は家での仕事をし、それからこの工場に来ます。そして子どもたちが帰る午後4時頃には、彼らを見に戻ります。義理の母の世話もしています」とリファトは語る。

近頃では、多くのカシミールの女性たちが、この保守的な社会の中で起業家として成功を収めている。さらに彼女たちの多くが、今、勇気をもって自らの夢を追っている。 

リファト・マソオディのバット製造工場。写真は許可を得て使用。

リファトは国内外の選手たちが彼女のバットを手にすることを望んでいる。彼女たちのような起業家は、自分で事業を始めることを夢見るこの州の他の多くの女性たちにとって、心を動かされるひとつの刺激となっている。

この記事は匿名を希望するカシミールの寄稿者が執筆した。

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