1980年代中ごろにボブ・ゲルドフが親しい有名人を山ほど集めて「ライヴ・エイド」というイベントを開催して以来、アフリカを救おうと意欲を見せる世界的著名人たちは数多く現れてきた。しかしこうした取り組みは、ほとんどが当初の目標とは程遠いものになっている。
エボラ出血熱の流行により、著名人の意識向上キャンペーンは多くのアフリカ人にとって、現地の実情とかけ離れていることが明らかになってきた。西欧のスターによる「パラシュートで投下するような」取り組みは、ちょっと世界的ニュースに躍り出たかと思うとすぐに衰える。これまで、こうした著名人による人道的事業には限界があることは(実際、西欧人の人道的事業は大体そうだが)さんざん立証されてきた。
例えば、「バンド・エイド30」がリメイクした「Do They Know It's Christmas?」は、エボラと戦っているアフリカ人たちの役割を認めていないばかりか、彼らの努力を手助けするのにも大して役立っていない。
対照的なのが「アフリカ・ストップ・エボラ」、こちらはティケン・ジャー・ファコリーやアマドゥ&マリアム、サリフ・ケイタらアフリカ人アーティストが作った歌である。両者のトーンの違いは覆うべくもない。
バンド・エイド30が善意でやっているとは言え、「Do They Know It's Christmas?」改定版の歌詞に漂う上から目線な調子に、アフリカ人は前からカチンときていた(改定版の歌詞は、「愛のキスが死を招く場所では 死を悼む涙ばかり」「さあ今宵手を差し伸べ 心を通わせよう」といったものである)。一方アフリカ・ストップ・エボラの歌詞は、感染地域の住民がエボラの感染拡大を止めるために何ができるか、ということに力を入れている。フランス語と地域で広く使われる現地語(ハウサ語、フラニ語など)で歌われているのは、感染地域の人口の大多数が歌のメッセージを確実に理解できるようにするためだ。
バンド・エイド30のキャンペーンと、それに対するアフリカの反感がある中で、はるかに知名度の低い取り組みが進行中である。セネガルに家族の絆を持つ米国人シンガーのエイコンによるプロジェクトで、西アフリカの電化を支援するものだ。
エイコンのフルネームはアリウネ・ダマーラ・ブーガ・チム・ボンゴ・プール・ナッカ・ル・ル・ル・バダラ・エイコン・チアム、子ども時代はほとんどセネガルで過ごした。2011年度アフリカの最も影響力ある有名人番付の5位(ベスト40のうち)にランクインしている。Vimeoの動画で、エイコンは電化プロジェクトを解説している。
彼はこうも言う。
The lack of electricity is currently a major problem in Africa. A significant number of households in rural areas and even urban cities do not have access to electricity. This is a real obstacle to Africa’s Sustainable Development.
In that perspective and within the framework of a Public-Private partnership, an alliance was signed between the private entities and the governments of different African nations to support the initiative. The project will consist of the installation of solar equipment in households and promote their energy sufficiency that also will allow millions of children to have access to electricity and improve their education through extended study hours.
現在アフリカで主要な問題は電力不足です。地方ばかりか都市部でさえ、電気を利用できない家庭は少なくありません。これこそがアフリカの持続可能な開発を邪魔しているのです。
この観点から、官民共同の枠組みの中で、アフリカ諸国の政府や民間団体らは、この取り組みを支援するための協定にサインしました。このプロジェクトでは家庭に太陽光発電の設備を設置することで、エネルギー自給を促進します。それにより、何百万人もの子どもたちも電気を使えるようになり、勉強時間の増加を通じて教育を向上できるでしょう。
エイコンのプロジェクトは長期計画であり、アフリカでよくあるような、概して大がかりな宣伝活動を要する、単発の取り組みとは一線を画している。エイコンの事業は西欧の聴衆に向けたものではなく、意識向上キャンペーンでもない。現在、彼は西アフリカを長期に旅行中で、行く先々で起業家や政策立案者らと会談している。これから巡る予定の国は、セネガル、マリ、ギニア首都コナクリ、ガンビア、ブルキナファソ、赤道ギニア、ガボン、コンゴ、コートジボワールの9か国である。
ギニアで、エイコンはコナクリのガマール・アブドゥル=ナーセル大学の学生と会談し、こう話した。
I'm also a businessman, but I want to do business that benefits Africa [..] all the resources needed to develop Africa are at the disposal of the continent, and that all Africans needed to do is to take the driving seat.
僕は実業家でもありますが、アフリカの利益になる商売がしたいのです。[…]アフリカは発展に必要な資源をすべて、自分たちで自由に使っていいのです。アフリカ人皆に必要なことはまず、運転席に座ることです。
ベナンの都市コトヌーでは、Arnaud Dounhmanmounが次のように書いている。
Au Bénin, une phase expérimentale a déjà eu lieu et c’est le village Avlo à Grand Popo qui a été retenu.L’artiste procèdera à la réception des matériels, Il s’agit des kits solaires pour les ménages ainsi que les lampadaires solaires pour l’éclairage public.
ベナンでは実験段階が既に進行中だ。実施されているのはグランポポ地区のAvloという村である。エイコン氏は資材を受け取りに行く予定だ。家庭用の太陽光発電キットや街路灯用の太陽光ランプなど。
マリでは、ジュルナル・デュ・マリ紙のModibo Fofanaによれば、エイコンはエボラ禍にもめげず、投資家のアフリカに対するイメージを変えるのにも寄与しているという。
Après une visite en Guinée, Akon est arrivé au moment où le Mali a connu le premier cas. Selon Akon, la médiatisation à outrance de cette maladie en Afrique contribue à ternir son image. “C’est à nous de changer l’image de l’Afrique. Quand les gens voient que je suis au Mali malgré l’annonce d’Ebola, cela va rassurer les autres.”
ギニア訪問の後、エイコンはエボラ出血熱最初の症例が出たというマリを訪れた。エイコンによると、アフリカにおけるこの病気をメディアが報道することで、アフリカのイメージは不当に傷つけられてきた。「アフリカのイメージを変えられるかは僕たち次第だ。エボラ出血熱の報道にもかかわらず僕がマリにいる姿を人々が見れば、よその人たちは安心できる。」
エイコンのやり方が、鳴り物入りのバンド・エイドの取り組みよりも実り多い成果を生むだろうと断言するには早すぎるが、少なくともエイコンは、アフリカが自力で発展を遂げる可能性に重きを置いている。――いつ来るとも知れない西欧からの救いの手を待つよりも。