本記事とラジオニュースは、アリ・ダニエル が PRI's The WorldのThe World in Wordsに2015年2月15日に発信したもので、コンテンツ共有協定の一環としてGlobal Voicesに再掲載している。
専門家によると、「uh」と「um」はそれぞれ微妙に異なる表現だという。「どうやら『um』は、『uh』と比べると長く考え込んでる時、大事な場合のためらいを意味していることが多いようです。」ペンシルバニア大学の言語学者マーク・リーバーマン教授は語る。少なくとも彼はそう考えているようだ。
リーバーマン教授は、いわゆる「有声休止(filled pause)」の研究を約10年にわたって行ってきたところ、とても面白い発見に至った。
「アメリカ人は歳をとるにつれて『uh』を多く使います。そしてどの年齢でも、男性は女性より『uh』を使う傾向にあるのです。」
ところが「um」については逆の結果となっている。若者は「um」を老人より多く使う。そして年齢を問わず、女性は男性より「um」を多用する。言語学者でさえ分からなかったこの結果を誰が予測できただろうか。この研究が行われるまで、ためらい表現の違いは話者が誰かということではなく、話者がためらう時間の長さが関係していると考えられていた。
去年の夏、リーバーマン教授はオランダのフローニンゲン州で開催された学会に参加した。休憩中に教授が数人の研究者と会話と交わしていた時、年齢や世代の違いこそが「um」や「uh」の使い方に関係していることに気が付いた。そこでその研究者たちと、アメリカ英語以外で「um」と「uh」がどのように使われているかを調べることにしたのだった。対象としたのはイギリス英語、スコットランド英語、ドイツ語、デンマーク語、オランダ語、ノルウェー語だ。
「どの言語でも結果は同じでした。」フローニンゲン大学の言語学者マルティン・ヴィーリング氏はそのように結論付けた。リーバーマン教授がアメリカ人で分析した結果と同様に、女性と若者は「uh」より「um」をよく使うのだという。
ヴィーリング氏の結論によると、今まさに言語が変化している過渡期だという。「その先頭にいるのが女性と若者なのです。」
「um」の未来は…
女性と若者が変化の先頭を切るというパターンは、言語が変化するにあたって典型的な現象だ。しかし一体なぜ、少なくとも2つの大陸の5つのゲルマン系言語で、「um」が主流になりつつあるのだろうか?それはまだ謎に包まれたままだ。
エジンバラ大学の社会言語学者、ジョセフ・フリューバルト氏は、「um」と「uh」の使われ方には若干の違いがあることは認めているものの、両者ともほぼ同じだというのが彼の考えだ。
「二つ選択肢がある場合、どちらかを頻繁に使うようになることで、使われる頻度が低いものは次第に使わなくなってしまうことがあります。しかしどうして『um』なのでしょうか?要はこういうことです。言葉の選択には、常に多少のランダム性が含まれるのです。」
ランダム性、とはどういうことか。フリューバルト氏によると、今回のような変化が起こる理由も、次の変化が起こるタイミングも分からないという。言語学者には言葉の未来を当てることは難しい。精度は気象学者以下だ。言語は天気よりはるかに不規則で、予測不可能な混沌に満ちているのだ、と。
ある言語の傾向が他の言語に飛び火する現象について、「確認された事例によれば、大抵こういうことが起こるのは、2種類の言語を使い、主に使っている言語にもう一つの言語を部分的に取り入れている国です。」とフリューバルト氏は説明する。
英語はほかの言語に最も影響を与えやすい言語だが、それが今「um」に起こっていることに関係しているかどうかはまだ分かっていない。言語学者にはさらなる研究が必要だ。
「um」と「uh」は今後どうなるのだろうか。ヨーヨーのように使われたり使われなかったりを行ったり来たりするのだろうか。はたまた私たちは今、「uh」が辞書から消えゆく瞬間を目撃している最中なのだろうか。
ところでフリューバルト氏は、「uh」には消えずに残ってほしいと思っているのだろうか?「『um』にしろ『uh』にしろ、特に強い思い入れはありません。一般的な傾向とは裏腹に、私は『um』をよく使います。なので『um』の存続を願うべきかもしれません。」
The World in WordsのポッドキャストはFacebookとiTunes上に公開されています。
パトリック・コックス追記:また本記事のポッドキャストでは、Schwa Fireの編集者で『言い間違えの心理』を執筆したミカエル・エラルドとの対談も収録されています。