政府は否定しているが、パキスタンのスモッグはラホールに深刻な健康問題を引き起こしている

IQ Air Visualのウエブサイトから引用 2019年11月5日

2019年11月第1週、南アジアの諸都市は大気汚染とスモッグに悩まされた。このことは、リアルタイムで大気汚染状況を伝えるIQ Air Visualのウエブサイトを見ると明らかである。スモッグは、一般的にレンガ工場、農民が燃やす稲穂、車の排気ガス、および廃棄物の焼却によって生じる煙が原因である。

11月1日、インド・デリー市の大気質指標(AQI)は529を示し、世界で最も大気が汚染された街となった。パキスタン第二の都市ラホール市のAQIは300で、デリー市と比較してもさほどきれいだとは言えない。ニュースウエブサイトやソーシャルメディアでラホール市のスモッグや大気汚染に関する更新記事が出回っている。#LahoreSmog(ラホールのスモッグ)というハッシュタグが、この1週間パキスタンのツイッターでトレンディなトピックとなっている。

煙が充満した部屋のようなラホールセントラル地区をドライブ中

ラホールの空気は全く酷い。このままでは、2~3年のうちに死んでしまいそうだ(Allah na karay)。この街で生活するなんて考えられない。

Allah na karay = God forbid, #SaansLenayDo = Let us breathe
Allah na karay = とんでもない、#SaansLenayDo = 呼吸させて

スモッグは10年前から繰り返し生じており、住民の健康に深刻な脅威を与えている。このスモッグは、いま深刻な問題を起こしておりインド洋褐色雲またはアジア褐色雲と呼ばれ、主にインド洋北部、インド、およびパキスタンといった南アジア上空を周期的に覆う汚染大気層のことである。

大気質指数

大気質指数は0から500の数値で表示され、0は最低レベルの大気汚染度、500は最高レベルの大気汚染度を示す。0から50の数値は大気が良好であるが、300以上の数値は危険な状態を示す。

Airnow.govのウエブサイトから引用

パキスタン政府は、気象庁・宇宙高層大気研究委員会の計器を使用している

高まる懸念

アムネスティインターナショナルは、他の国際機関と連名で、パキスタンのパンジャブ州に衛生緊急事態宣言を発した。内容は以下の通りである。

Prolonged or heavy exposure to hazardous air can result in severe health issues including asthma, lung damage, bronchial infections and heart problems, and shortened life expectancy – putting at risk people’s rights to life and to health, as well as the right to a healthy environment.

有害な大気に長時間あるいは大量にさらされると 、喘息、肺障害、気管支炎、および心臓障害といった深刻な健康被害が生じ、短命化につながる。こういった事例は、住民の生命・健康を守る権利および健全な環境を守る権利を侵害するものである。

TEDxLahoreのアビッド・オマールは、ラホールの大気汚染について詳しく調べ、同市の大気汚染は、ほぼ通年問題となっていることを明らかにした。

政府とソーシャルメディアの対立

各種調査によると、貧困層および下位中流層は、畑などの屋外で作業をする機会が多いのでスモッグによる有害な影響をまともに受けることとなる。また、これらの人たちは経済および健康の両面で深刻な問題を背負うことになる。

しかし、パキスタン首相の環境顧問マリク・アミン・アスラムは、モニターに示される各国の大気質指数値を受け入れようとせず「ラホールの大気質指数はニューデリーよりはるかに良好だ」といっている。

パキスタンの気候変動担当大臣ザータイ・グルは、パキスタンの政治家マウラナ・ファズラー・レーマンが主導したアザディの行進が、ラホールで起きているスモッグの最大の原因だとさえ言っている。また、国際機関による評価を否認している。

「ラホール市内へ流入する車両の急増が、この都市のスモッグ発生の主な原因です」 と、気候変動担当大臣はメディアとのインタビューで答えている。

政治家および政府は環境の悪化や気候危機がもたらす悪影響を軽く見ていると、ソーシャルメディアユーザーは強く非難している。

パキスタンの環境担当部局は大気質データを隠蔽し、国民にスモッグの実情を悟られないようにしている。

トランプ大統領は政府ウエブサイトから「気候」を削除して、あえてアメリカは気候危機に対して責任がないとした。

国民は注意を怠らない。だからフェイクニュース にはだまされない。

ソーシャルメディアの活動家、市民社会に所属する人たち、そして環境保護主義者たちが #SaansLenayDo (#Let us breathe:息をさせて)という標語を掲げて、パンジャプ政府の怠慢を糾弾する運動を始めた。また、企業を名指しして操業を停止するよう求める者も現れた。

シェイクプラ・グジュランワラ道路にある工場は年中無休で操業している。
倉庫/生産拠点#1
所有者:マリック・アサン
所在地:  https://t.co/NiyNfEvutM#Gujranwala

誰が既得権を持っているというのか。ぜんそくや気管支炎そして弱った肺を持っている大人や子供か。高齢者か。高い医療費に苦しむ人たちか。気候変動担当大臣の言動は全く恥ずべき行為だ。議会制民主主義の社会ではこんなことは許されない。

パンジャブ安全都市管理局がラホールに設置したモニターの数値を見れば、一部の大臣がスモッグについて説明している内容は嘘だと分かる。ラホールファイサラバード、 イスラマバードカラチ &およびその他の都市では、誰もが有毒ガス を吸っている。政府に非常事態宣言をするよう要請する。

ラホール市の大気汚染に懸念を示す市民の数は雪だるま式に増加している。カラチ、イスラマバードおよびペシャワールの各市民は、自分たちの街の大気を問題視し始め、対策をとるよう求めている。

大気汚染時の視界の良否は、いかなる時も大気中の粒状物質の組成により決まる。
潮風がまた吹き始めたけれど、次に示す各時刻ごとの数値を見ればわかるように、今日のカラチの大気状態は依然として最悪だ。

多くの人が深刻な状況を憂うツイートを発している中で、現状を修復する道を探っている人もいる。

ラホールの薬屋ではマスクが売り切れだ。だったら、darza に注文したらどうだ。ただし、N95規格のマスクじゃないとだめだぞ。

どうやったら第三の極地@third_pole、訳注:ヒンドゥークシューカラコルムーヒマラヤにまたがる地域)を覆う大気汚染から抜け出すことができるのだろう。

環境保護主義者、科学者および医療専門家たちが、適切な対策をとるよう政府に迫る請願書を作成しインターネット上に拡散している。

公衆衛生およびスモッグ分科会に所属する医療専門家、科学者および研究者たちが始めた請願運動に1000を超す署名が集まっている。
署名はこちらで: https://t.co/U7tQtN2ch7

#PublicHeathEmergency #SaansLenayDoのリツイートをお願いします

2019年11月5日、ある青少年グループが ラホール高等裁判所に請願書を提出し、政府に、真実を開示し深刻な現状を国民に示すよう 迫った。

青少年たちが、ラホールの大気汚染の深刻さについて政府は真実を開示するよう求めて、ラホール高等裁判所に請願書を提出した。この請願に対応するため、来週火曜日にEPAとAGが召喚されることとなった。

多くのパキスタン国民は、いつになったら政府はパキスタンの大都市における大気汚染の深刻さに気づき、その対策に乗り出すのだろうかと思っている。

校正:Sumiyo Roland

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