フィリピンの重量挙げ選手ヒディリン・ディアス(30歳) 東京オリンピックでフィリピン史上初の金メダル

訳注:この記事原文は2021年7月28日に掲載されました。

ANCニュースの現地報道画面

フィリピンの重量挙げ選手ヒディリン・ディアスは、祖国にオリンピック史上初の金メダルをもたらし、世界中のフィリピン人を勇気づけた。ディアスは、2021年7月26日に行われた2020夏季東京オリンピック女子重量挙げ55㎏級グループAで優勝した。

ディアスはトータル224㎏のオリンピック新記録で優勝した。銀メダルはトータル223㎏の廖秋雲(中国)、銅メダルはトータル213㎏のズルフィア・チンシャンロ(カザフスタン)だった。ディアスは、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックでも銀メダルを物にし、女子としてはフィリピンで初めて2つのオリンピック・メダルを獲得した選手となった。

この歴史的な快挙の後、フィリビン大統領ロドリゴ・ドゥテルテと政府官僚は一堂に会しディアスの優勝を祝ったある官僚は彼女を「国の宝」と称えさえした。しかし、ツイッター上には、政府が彼女に対して行った嫌がらせを指摘するコメントが時を移さずに数々寄せられた。彼女は以前、政府から反政府共産主義者と濡れ衣を着せられ「共産主義者」のレッテルを張られたのである。

ドゥテルテ大統領の主張によると、彼女は、2020年の東京オリンピックに参加するために資金援助をソーシャルメディアで募った後、2019年に騒乱の謀議に加わったとされる。さらにまた、「国家の敵」とされる組織や個人の一覧表に掲載もされた。

ヒディリン・ディアスは、スポーツ選手に対するフィリピン政府からの資金援助の極端な貧弱さを訴えた。すると、ドゥテルテ大統領を失脚させようとする陰謀に加わったとするレッテルを張られてしまった。今回の優勝の衝撃は強烈だ。国民を馬鹿にし女性を蔑む政府の面目は丸つぶれだ。

ディアスが資金の困窮に陥ったのは、フィリピン政府からのスポーツ資金支援が慢性的に不足しているとを象徴するものである。

ドゥテルテ政府作成の「陰謀計画者一覧表」は、反対意見を受け入れようとする民主的な姿勢を委縮させるものだとして多くの国民から批判されてきた。この一覧表に掲載されればソーシャルメディアへの関心を示しただけで、ごく一般的な市民でさえ「共産党」あるいは「テロリスト集団」の一員または支持者としてのレッテルを張られてしまう。

ディアスに対して公式に謝罪すべきだとする声が上がったが、大統領報道官は、ドゥテルテ政府がそのような一覧表を公表したことはないとしてその要求をかわした。

政府からヒディリン・ディアスへの支援金は不十分だった。

なお悪いことに、彼女はドゥテルテ政府によって「レッド・オクトーバー事件」に関与した共産党員とみなされた。しかし、それはでっち上げだということが明らかになった。

このでっち上げに悩まされたが、見事に耐え抜き、今や、フィリピンに史上初の金メダルをもたらす人となった。

彼女の優勝により、ドゥテルテ大統領の施政方針演説(SONA)はかすんでしまった。2時間15分に及ぶ演説の内容は、麻薬、共産主義者、政府批判者に関するものであり、新型コロナウイルス禍や悪化する社会経済危機にはほとんど触れず、従来からの方針を繰り返し述べるにすぎないものであった。数千の市民がドゥテルテ大統領の施政方針演説に反対して、警察隊によるバリケードや暴力の脅威をものともせず首都マニラやその他の主要都市でデモ行進を行った。

ドゥテルテ大統領は、​2021年の施政方針​演説の中で警察及び軍隊に共産主義者を見つけ次第射殺するよう指示した。そうすることが自分にとって喜ばしいことだとも強調した。

ドゥテルテ大統領の施政方針演説の最後の日に、不当に麻薬常習者リストに挙げられた女性が、初めてフィリピンに金メダルをもたらした。偶然の一致だろうかそれとも運命だったのだろうか。ディアスこそ、最後にメダルを授与されるに相応しい女性だ

ヒディリン・ディアス、あなたのおかげで、私たちはフィリピン人であることを誇りに思うことができた。ありがとう。

ヒディリン・ディアスは、全国民に多くの誇りと名誉をもたらしてくれた。しかし、かつて、政府の不備を指摘する発言をしたために政府から攻撃を受け共産主義者のレッテルを張られてしまった。だから、ドゥテルテ大統領の最後の施政方針演説の日に彼女が金メダルを獲得したのは、まさに詩に残しておきたいような快挙だ。

この事実を否定する者はどこにもいない。

ドゥテルテ大統領の長たらしく精彩にかける演説のすぐ後に起こったディアスのオリンピック金メダル獲得は、フィリピン国民が待ちに待っていた出来事である。彼らは、ドゥテルテ政権の新型コロナウイルス禍対応の無能さや民主主義への過激な攻撃にうんざりしているのである。

校正:Eiko Iwama

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