オヌール? シェヘラザード? ラテンアメリカで『千夜一夜物語』の登場人物の名づけが多いわけ

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トルコのメロドラマ『千夜一夜物語』はラテンアメリカの国々で人気を博しており、文化的にも注目されている。画像はEcuavisaより。許可を得て掲載。

(原文掲載日は2015年5月20日)

エンタテインメントのジャンルの中で、メロドラマは大衆向けの下世話なもの、女性や労働階級向けの娯楽だと軽視されがちだ。しかし最近の調査を見ると、メロドラマ特有の力によって、人々は新しいコンテンツも容易に消化・吸収できているように思われる。全国的にメロドラマが見られるようなかつてない事態になると、娯楽番組がグローバリゼーションへ向かう明るい未来を照らしてくれることも考えられる。

長年、ラテンアメリカは世界の典型的なメロドラマ製作者かつ輸出者であり、地域の内外で商業的成功を収めてきた。しかし物事は変わっていくもので、ラテンアメリカは今や人気のある海外のメロドラマの輸入も行っている。トルコの『千夜一夜物語』がそうだ。

このシリーズは、病気の子を持つ未亡人の建築家シェヘラザード・エヴィヤオグが子の治療費を稼ぐため、億万長者の上司オヌール・アクサルと一夜を過ごすことになるという展開だ。2人は最終的に恋に落ちる。その前に数えきれないほどの恋の駆け引きや誤解に巻き込まれるが、それらはハッピーエンドとは程遠いものである。

この古典的なクレブロン(ラテンアメリカのメロドラマの名称。「クレブラ)」という語からきている)の特殊性はラテンアメリカをうまく舞台にしたことかと思われたが、実はそうではなかった。このドラマはあまりにも有名なトルコ発祥の物語であり、その背景が、ラテンアメリカの視聴者の多くにはエキゾチックに映るのだ。

ラテンアメリカの民衆を惹きつけたのは、まさにこの異国風の特色である。アルゼンチンでは地元の放送局カナル13(Canal 13)がその人気に突き動かされ、すさまじい高視聴率を叩きだした。

『千夜一夜物語』は瞬く間に人気が広がり、視聴率30%を超えてエル・ドセ(El Doce)局の中で一番の人気番組になりました。

チリのツイッターユーザーはこの番組に絡めたジョークを楽しんでいる。

チリでオヌール・アクサルと過ごした夜が忘れられないわ。

コロンビアでもカラコールTV(Caracol TV)局で放送され、大成功を収めた。

最後の『千夜一夜物語』は午後、コロンビアのカラコールTV(Caracol TV)局にて最終エピソードを放送! ご覧になる方はリツイートを!

ペルーとエクアドルでも、『千夜一夜物語』には大きな反響があった。

このドラマを見るためにペルー中がストップしている。すごいことだ!

『千夜一夜物語』はどんどん良くなってる! 大好き!

ウルグアイでは、カナル10(Canal 10)が興奮ぎみにドラマを紹介している。

今日のエピソードは間もなく! ケレムとオヌールの間に何が起こるのか?

最近では、ボリビアのウニテール(Unitel)局がこのドラマを放送した。

ウニテール(Unitel)局では今まさに『千夜一夜物語』が満を持して始まろうとしています。

チリとアルゼンチンでは、このドラマが似たような効果をもたらしている。親が子どもに、オヌールやシェヘラザードといった登場人物の名前を付けているのだ。

不思議だね。チリでドラマが放送されてから、オヌールやシェヘラザードという子どもの名前が増えてきたぞ。

しかしインターネット上では、ドラマの登場人物の名前を付けるという新たなブームを誰もが歓迎しているわけではない。

この女の人、2015年の人気ドラマだったからってオヌールなんて名付けたのを、その子にどう説明するつもりなんだろう……

どうしたら子どもにオヌールなんて名前を付けようと思えるの? このドラマ、モンスターを生んでいるわ。

『千夜一夜物語』が性の不平等を後押ししているようだと批判する人もいる。

『千夜一夜物語』と『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は疑いの余地なく成功と言えるね。21世紀、女性差別は未だに撲滅からほど遠いみたい。

中には政治的な批判もある。たとえばアルゼンチンにあるアルメニア人コミュニティは、このドラマがトルコのプロパガンダだと強く非難している。このコミュニティはトルコ文化の流入は何であろうと敬遠しているようだ。100年前のアルメニア人虐殺をトルコ政府が認知しようとしていないためである。

中傷も多いものの、ラテンアメリカの視聴者の間では依然その人気は続いている。2015年5月にコンセプト・メディア(アルゼンチンのコンサルティング団体)が、『千夜一夜物語』に対する感想の聞き取り調査の結果を発表し、番組の見どころの一つが「自分たちとよく似た異国風趣味」であり、そのおかげでアルゼンチン国民は自分たちのものとさほど変わらないような異文化に親しめると結論づけた。回答者たちはまた、この番組が視聴者に人気があるのは、連続ドラマの古典的なメロドラマ的要素が大きいためだと強調した。高視聴率を狙う地元テレビ局がセックスシーンを使うことに慣れてしまった視聴者は、セックスシーンのない、ラブストーリーを重視したドラマに惹きつけられたのである。

しかしこのようなメロドラマの成功はラテンアメリカに限ったことではない。実際アラブの世界では、ファンの間にも批評家の間にも、よく似た現象が見られている。いわゆる「第三の世界」における「西洋化」とされるものへの反応だ。南半球の国々の社会は、他のどの地域よりも西洋のメディアや娯楽を好むそうである。

このような文化的交流をみると、トルコとラテンアメリカのような「周辺」世界間で交流ができるということにも首を傾げてしまう。この2つの地域は違いがあるにも関わらず、多くの点で似通っている。メロドラマの輸出入という文化的交流が、映像作品の出入りによってお互いにより肩を並べたグローバリゼーションの新しい可能性を生み出し、かつての独占的だった地域を解放することも考えられる。たとえその作品が大量生産による保守的で金儲け主義の強いものでも、そして社会の隅々まで検閲の目が光っているような国から来たものだとしても。

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